この記事をまとめると
■ホンダが新領域の技術開発を発表
■ホンダは将来の人間の移動を多角的にとらえている
■人間が乗れるドローン・ロケット・アバターロボットの3つが語られた
人が乗れるドローンの実現も「すぐそこ」!
2021年、本田技研工業の新社長に就任した三部敏宏氏は、実質的な就任記者会見において2040年までに四輪ラインアップをフル電動化することを宣言したことで話題となったが、同会見においては「3次元、4次元」にホンダの製品群を拡大していくことも宣言していた。4次元と言われてもリアリティがなく、ドラえもんの4次元ポケットくらいしか思い浮かばないという人も少なくないのでは?
はたして、ホンダの目指す未来像とは何なのか。その一端を知ることのできる「新領域ビジョン・テクノロジー」を取材する機会に恵まれた。ここでは、そこで示されたホンダの新技術を紹介しよう。
結論からいえば、ホンダはモビリティカンパニーとして、人が移動に求めるすべての要素を満たす企業を目指している。
ご存じのようにホンダは二輪・四輪・バギーなど、船外機などのマリン事業、そしてホンダジェットと、陸海空の移動手段を提供している総合モビリティカンパニーだ。しかし、そんなホンダもすべての領域をカバーしているわけではない。
たとえばアメリカでは400kmという距離を目安に、400km以下であれば自動車、それ以上は航空機を利用するというイメージで移動手段が使い分けられているという。しかしクルマで400kmというのはどう見積もっても3時間以上はかかってしまう。
クルマの移動は100km程度に抑え、100~400kmの領域をクルマよりも速く移動できる新モビリティを生み出せば、ニーズを創出できるとホンダは考えた。
そのモビリティというのがガスタービンエンジンを積んだeVTOL(イーブイトール、電動垂直離着陸機)だ。
水平方向に設置された8つのプロペラと垂直方向の2つのプロペラを持つeVTOLは、さながらドローンのような形状だが、たしかにすべてのプロペラは電動化され、技術的にはドローンの親玉といえるもの。ただし、ホンダはモビリティカンパニーであるから、人が乗れるサイズを想定している。
しかし電動で航続距離を稼ぐのは非常に難しい。航空機となると軽量化が重要なファクターで、むやみにバッテリー搭載量を増やすわけにはいかないからだ。
そこでホンダは、カーボン製の軽量な機体の中央に小型軽量なガスタービンエンジンとジェネレータを搭載、その電力によってeVTOLを飛ばそうと考えた。これにより前述したように400km程度までの航続距離が可能になる。クルマと従来型航空機の間をつなぐ新モビリティとなり得るというわけだ。
垂直離陸が可能なためeVTOLの空港にあたるハブを小型化できるというメリットがある。さらに将来的にはクルマもeVTOLも完全自動操縦とすることで、スマートフォンで目的地を設定すると自宅に迎えにきたクルマがeVTOLのハブへ導き、目的地近くのハブからふたたび自動運転のクルマに乗るといった総合的なシステムも考えているという。
日本では列車網が発達しているため400km以内の移動手段としては新幹線を使うほうが便利かもしれないが、最初のターゲットとしている北米、また発展著しいアジア地区においてはeVTOLと完全自動運転車を組み合わせた移動サービスというのは大いに可能性があるあろう。
しかも、これは夢物語ではない。すでに模型による飛行実験は行なわれており、はやければ2030年代にはアメリカで事業展開をするというスケジュールで進んでいるプロジェクトなのだ。
従来の航空機よりも低空を飛ぶeVTOLこそが三部社長の言っていた3次元の新モビリティである。