「乗れるドローン」に「分身ロボ」を開発! ホンダはやっぱり面白かった (3/3ページ)

もはやアニメのような分身ロボットにもホンキ

 さて、ホンダの先進テクノロジーの象徴といえば二足歩行ロボット「ASIMO」を思い浮かぶ人も多いだろう。

 ASIMOの開発自体はすでにストップしているが、その経験を活かして開発が進められているのが「アバターロボット(分身ロボ)」だ。

 人が移動するということは、とくにビジネスシーンにおいては目的地にてなんらかの仕事があるからだ。クルマに限らずメーカーのエグゼクティブやプロジェクトリーダーであれば、製品試作を確認するために世界の研究所を飛び回っていることだろう。

 そうすると仕事の大半を移動時間が占めることになってしまう。

 触感をリアルに感じられるハンドマニピュレータとVRゴーグルのようなものを組み合わせた操作系で目的地にいるアバターロボットを操作することで、あたかも移動したかのような体験をすることができる。こうすれば移動時間を短縮でき、生活にゆとりが生まれる。

 またアバターロボットは宇宙空間でも有効だ。月面にアバターロボットを置いておき、それを地球から操作することで誰もが月を体感することも可能になるというのだ。

 アバターロボットによるバーチャルリアリティー、これこそがホンダの考える4次元モビリティである。「どこでもドア」のように移動時間を究極に短縮することができるのだ。

 そして、このアバターロボットの開発においてASIMO開発の経験が生きてきているという。現時点ではアバターロボットへの組み込みを想定したロボットハンドの開発が進められている段階だが、これまたASIMOでの経験からすると2030年代前半にはアバターロボットは実用化できるのではないかというのが担当エンジニアの見解だ。

 このようにホンダが新領域にチャレンジしているのには訳がある。

 ホンダは独立した研究開発機関として本田技術研究所を置いているのは知られているが、近年では量産に関する領域が増えてしまい新しい価値の創造に注力できていなかったという。そこで研究所の体制を大きく見直し、二輪や四輪などの量産領域については本田技研工業に移管した。

 現在、本田技術研究所は先進領域を中心に研究開発する組織に生まれ変わっている。このドラスティックな体制変更についてはホンダらしいものづくりができなくなるという声もあったが、これほどの新しいアイディアが実現に向けて突き進んでいるという状況を知れば、あのときの改革は意味があったのだろう。

 本田技術研究所の大津啓司 代表取締役社長は「若い人が新しい提案をできる環境づくりに力を入れている」という。さらに「あきらめなければ、いつかは実現できるという意味では不可能はない。実現することにより失敗は経験に変わる。そのプロセスを繰り返すことでエンジニアは育っていく」と新領域へのチャレンジを強く宣言した。

 あらためて、今回発表された新領域テクノロジーを見れば、モビリティカンパニーとしてのホンダの未来は間違いなく明るい。そして、これらのビジョンを実現するためのバックボーンとしてクルマやバイクでの経験が無駄になっていないどころか、重要な役割を果たしているといのは、一人のクルマ好き、バイク好きとしても嬉しい限りだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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