コストを度外視すればカーボンという選択肢も
こうした「銑鉄」を使うのには理由があって、ブレーキパッドに挟まれて、運動エネルギーを熱エネルギーに変換して、放熱する役割があるブレーキローターの素材としては、「銑鉄」が一番適しているからだ。「銑鉄」の場合、組織の中に黒鉛が棒状に細かく分布していて、この黒鉛がパッドと接したときにある種の潤滑剤と働き、ローターの素材として具合がいいということで重宝されてきたというわけだ。
もちろんローターは消耗品でもあるので、価格の安さも長所だが、耐腐食性は鉄製品の中でもかなり低い……。
そのため、濡れるとすぐに錆びてしまうが、ローターの表面が錆びたとしても、近所をひと回りして、ブレーキを何回か踏めば、すぐに錆は消えてしまうので、よっぽど長期間放置しておかない限り、ブレーキローターの錆を気にする必要がない。
当然のことながら、錆を防止するために、ブレーキの表面に潤滑スプレーなどを噴霧するのは厳禁だ。
ポルシェなどが採用する、カーボンセラミックブレーキにすれば、ローターの錆ともおさらばできるが、カーボンセラミックブレーキは1台分で100万円コース!
鋳鉄ディスクより約50%も軽く、熱にも圧倒的に強いが、コストを考えると一般に普及するとは考えづらく、今後もブレーキローターの主役は鋳鉄ローターになるだろう。