ピークパワーの炸裂感が凄まじい!
外観は専用のリヤスポイラーと18インチアルミ、フレッシュエア吸入効率を高めるグリル類のメッシュ化程度で、ノーマルとの識別点は意外と少ないが、エアクリーナーがフロントフェンダー内に配置されるところはレーシングマシンのファクトリーらしさを感じさせるポイント。
ブレーキはAPレーシング製で、フロントはキャリパーが6ピストン、ローターは355mmの大容量を誇る。APレーシング製ブレーキはWRCグループA/WRカー時代のWRXが採用していたこともあり、まさに垂涎と羨望の仕様だ。サスペンションはアイバッハ製スプリングとビルシュタインダンパーを専用チューンしたもので、これまたWRCマシンのWRXイメージが強い組み合わせだ。車高はノーマル比10mmダウンと控え目だった。
内装は、レカロ製バケットシートやグロスブラックのトリムパネルを採用。「コスワース」のエンブレムが、フロントバンパーやダッシュボードにあしらわれる。
もっとも強烈なのはやはり走りの印象で、低回転時から発生する底知れぬ極太なトルクと、3700回転付近から急激に立ち上がるハイブースト車ならではのピークパワーの炸裂感は、市販されたなかでは歴代どのWRXよりも凄まじいレベルにある。身体がシートバックに張りつきっぱなしになる加速Gや、パワーの炸裂とともに高まるタービン音やブローオフ音がもたらす快感もさることながら、途方もない大パワーをしっかり受け止めるサスペンションや、強力無比の制動フィールが得られるAPレーシング製のブレーキの圧倒的な信頼感もまた強烈な印象として残る。過激なチューンドカーながらエンジンパワーだけを突出させず、クルマ全体の性能を高度にバランス良く引き上げたコンプリートカーだったのだ。
英国SUBARU公認の市販車ということで、取り扱いや整備に特殊な要件は求められないところは、一般的なチューンドカーとは一線を画すポイント。室内パッケージングやSIドライブ、DCCDなど居住空間や室内の装備類は基本的に国内仕様と変わらず、並行輸入車ながら、整備や修理は全国のSUBARU正規販売店で普通に受けられたという。マフラーの音量なども問題なく国内基準をクリアしているので、車検も特に心配なし。消耗パーツ類もおおむね国内の3代目WRX STI(GRB)と同じだ。ただし、さすがにコスワースの専用パーツやエンジンのコンピュータは入手困難となる。
2021年9月現在、中古車検索サイトを見てもヒットしなかったが、おそらく今も日本のどこかで1~2台が存在しているはず。いつの日か、あの勇姿を再び拝みたいものである。