標識が見えない場合は違反にならない可能性が大きい
道路交通法では、
「公安委員会が標識を設置し、及び管理して交通の規制をするときは、歩行者、車両又は路面電車がその前方から見やすいように、かつ、道路又は交通の状況に応じ必要と認める数のものを設置し、及び管理してしなければならない」(道路交通法施行令1条の2第1項)
と記されているので、街路樹などで標識自体が隠れていたり、走行中のクルマからほんの一瞬しか見えないような位置に道路標識が設置されていた場合は、交通違反とは取り扱われない可能性が大きい。
そうしたときに、警察官に呼び止められた場合は、ドライブレコーダーなどでそのことを証明する必要がある。
ドライブレコーダーの映像やデジカメなどで撮影した写真など、客観的証拠があっても、警察官が違反と主張するときは、その場でキップにサインせず、仮にキップにサインしたとしても、交通反則金を収めずに、きちんと裁判で争うといい。
過去には、容易に判別できる方法で設置されていない標識は、適法かつ有効な規制がなされているものとはいえない=違反に当たらないという最高裁判例も出ている(最高裁判所昭和43年12月)。
また2019年3月には、通行禁止の道路をバイクで走ったとして兵庫県警に摘発されたライダーが、「標識が運転者から見えづらい状態だった」として交通違反取り消しを求めた訴訟を起こした裁判で、神戸地裁は(標識は)見通しの悪いカーブの終端から約10~20メートル先にあり、「運転者からは1~2秒で見えなくなる」と指摘し、「標識の設置に問題があった」と、ライダーの訴えを認める判決を言い渡した事例もある。
まとめると、道路上のペイント=「道路標示」は、法的な規制効力はないが、「道路標識」とセットになっている場合は、それを見落とすと違反になる。
一方で、「道路標識」自体が、車両前方から見やすいように設置・管理されていない場合は、交通違反として取り扱われない可能性があるので、きちんと証拠を集めて(保全して)、法的に自分の立場を主張してみるといいだろう。