この記事をまとめると
■MRやRRレイアウトはスーパーカーやスポーツカーのものと思われがちである
■乗用車や実用車でもMR/RRレイアウトが採用されたモデルもあった
■乗用車や実用車でのMR/RRレイアウトの採用には高性能以外の理由があった
MRやRRというだけで一目置かれる存在
MR(ミッドシップエンジン後輪駆動)やRR(リアエンジン後輪駆動)というと、MRならフェラーリやランボルギーニといったスーパーカー、RRはといえばポルシェ911を連想する人が多いだろう。それだけに、実用車にMRやRRが採用されていると「凄い!」「何で!?」と驚きを持って受け取られることになる。
ホンダの軽自動トラック&キャブオーバーバン「アクティ」や第二世代「ホンダZ」にMRを採用していたり、三菱自動車は軽乗用車「i(アイ)」にRRを採用していた。その駆動レイアウトを聞いただけで、一目を置かれる存在となっていたことは間違いない。
こうした軽自動車クラスの実用車/乗用車でMRやRRレイアウトを採用する意味は何だったのだろうか。それはMRやRRの役割を知ることで理解できるようになる。
MRとは分類上前輪軸と後輪軸の間にエンジンを配置することで定義される。車体中央に近い位置に重たいエンジンを搭載するのでヨー慣性モーメントを小さくできる。自動車には概念としてX軸、Y軸、Z軸の3つの軸が重心の位置で交差するように通っており、走行中X軸を中心にロール運動、Y軸を中心にピッチング運動、Z軸を中心にヨー運動を引き起こす。エンジンをできるだけ重心に近づけることで各軸回りの慣性モーメントを小さくすることができ、ステアリング操作に機敏となって運動性能が高まる。
スーパーカーやレーシングカーの多くがMRを採用するのはそのためだ。しかし、車体中央部分は本来キャビンとなり居住空間となるため、乗員数に制限がかかる。MRスーパーカーの多くが2シーターであるのはそのためだ。
ではホンダ・アクティ、ホンダZは、乗用車、実用トラック、キャブオーバーバンでいかにMRを可能としていたのだろうか。
それらはエンジンをフロアに下に置くことで実現されていた。おかしな表現をすれば、MRスーパーカーの屋根の上に大きな荷台やボックス型キャビンを乗せているようなものだ。軽自動車の小さなエンジンだから床下に押し込めてもフロア高は極端に高くならず、実用的な寸法に収めることができていた。ホンダZのSUV車としてフロアを高めることができ、MR化が可能であった。フロア下のMRとすることで重心は低く、後輪駆動輪にしっかり荷重がかかり、4WD化も効率よく行えたのである。