最後のエンジン車にプレミアがつく可能性はあるが維持は困難
しかしながら、現時点で新規エンジンの開発が止まったとすれば、3年後にはホンダから新しいエンジンが出てくることはなくなると考えられる。
そうであれば、現時点でホンダのエンジン車を買っていいものかどうか、という疑問が湧いてくる。
将来を予想するのは難しいが、これまでの流れからすると車両の生産終了から5~10年程度は純正部品の供給はされると考えられる。2040年にホンダがエンジン車の新車販売を止めたとしても、2035年に新車購入したHEVのエンジン部品はおそらく入手できるだろう。
2040年にホンダのエンジン車がいきなり維持不能になるということは考えづらい。
また、ホンダがエンジン車を止めるということは最後のエンジン車にはプレミア的な価値が付く可能性もある。一般的なリセールバリューを期待するのは難しいかもしれないが、趣味人を対象にした中古車販売であればホンダのエンジン車に価値が生まれる可能性もある。
ただし、ホンダについていえばオーバーサイズピストンの生産を終了したという過去もある。趣味性の高いクルマ(エンジン)であればサードパーティ製のパーツ供給も期待できるが、それはごく一部の人気車に限られるだろう。
ところで、ホンダに限らず全体としてエンジン車のリセールバリューは落ちていくはずだ。なぜなら、エンジン車は不便なものになっていく可能性が高いからだ。
トヨタが主張するようにHEVの環境性能が高いとして、それはガソリンの消費量が少ないことを意味する。そしてトヨタとその仲間たち以外の自動車メーカーが電動化に進んだとすれば、ますますガソリンの消費量は減っていく。
そうなると、全国的にガソリンスタンドというインフラが壊滅するであろうことは、ほぼ確実といえる。ガソリンが気軽に手に入らない世の中でエンジン車を乗るというのは趣味であれば許容できても、日常の足とするには不便極まりないということになるだろう。
また、トヨタの言い分としては「エンジン車を作ることは雇用の維持につながる」という。この発言を裏返せば、電動化は雇用を減らすという意味であり、BEVが主流の時代になると人件費が減るという風に理解できる。
すなわち、BEVというのは将来的に製造コストが下がる可能性が高いのだ。現在、電動車の高コストのもとになっているバッテリーがある程度コストダウンできてしまうと、あえて製造コストの高くなるエンジン車を買おうというユーザーは少数派になるだろう。
そうなると、ますますガソリンインフラは消滅していくと容易に想像できる。日常的にガソリン給油することは難しくなり、エンジンオイルのような油脂類の入手も困難になるだろう。
現時点でホンダのエンジン車を買ったとしても10年乗るというのであれば問題ないといえる。ただし、何十年もエンジン車に乗り続けるというのであれば消耗部品の確保などメンテナンス、そして燃料(ガソリン)の確保という点から、かなり難易度の高い選択になる可能性は否定できない。