大本命はGRスポーツのガソリンモデル!
次にガソリン仕様のZXに乗り換える。外観や室内の意匠はほとんど差がなく、着座した雰囲気も変わりない。ただエンジン回転計の目盛りが違うことがディーゼルとの違いだ。
エンジンを始動すると、こちらは静かで振動もすくなく、さすがD4ST式V6エンジンの高い完成度を感じさせる。アクセル操作に対しシャープに吹け上がり、スポーツカーのような回転フィールながら、振動、遮音性など高級車レベルの室内空間が演出されている。
走り始めるとアクセルレスポンスに優れ、ターボ過給レスポンスがよく力強い。じつは最大トルクはディーゼルのほうが700N・mと大きく、トルクレンジも広いのでガソリンエンジンは不利かと案じたが、D4STの好特性で、むしろ勢いの良さを感じさせられるのだ。最高出力は415馬力とディーゼルの309馬力を圧倒しているので、速度レンジが高まればよりガソリン有利になるだろう。ただ燃費的には回転が高い分不利になり、高速道路でもリッター当たり8〜9kmといった巡航燃費。加えて指定燃料がハイオクなので燃料代は嵩んでくる。
フロントサスペンションのスムースで粘りのある接地感、リアアクスルのバタツキ感は共通していて、これらは悪路を走ったときにその効能を明確に示してくれることだろう。
GRスポーツはトヨタ自動車が長年参戦し結果を残し続けている世界一過酷なラリーと言われる「パリダカ(パリ・ダカールラリー)」での経験をフィードバックしパッケージングされている。
外観的にZXと大きく異なっているのがフロントマスクだ。ZXではフロントバンパー下の処理を拡大し前面の迫力を演出しているが、そのためアプローチアングルが24度と小さくなってしまっていた。GRスポーツは標準バンパー形状にアンダーガード風処理で加飾していて、アプローチアングル32度を保っているのだ。
またホイールは18インチ化され、タイヤサイズは265/65R18となっていて、一本当たり重量は31kgと軽減している。このバネ下の重量軽減効果は大きく、とくにリヤアクスルのバタツキに対して好作用しているようだ。
まずガソリン仕様のGRスポーツに乗ると、遮音性能の高さと振動の少なさに加え、リヤアクスルの動きが抑制されていて気にならなくなった。これなら欧米のライバルと比較しても遜色ない乗り心地といえる。このガソリン仕様GRスポーツが新型ランクルのバリエーションの中では「真打ち登場!」と言える完成度で、ベストバイだと感じた。
ディーゼル仕様のGRスポーツも試乗したが、こちらは何故かリヤのスプリングが固く感じられ、その分スポーティではあるものの、高級車としてのテイストではなかった。
今後、さまざまなシーンでライバルと目されるランドローバー・ディフェンダーやジープ・ラングラー、メルセデス・ベンツGクラスなどと走り比べる機会が訪れることを願う。