「MTが売れるから」でも「イメージ戦略」でもない! トヨタが積極的に「MT」ラインアップを増やす「意味」と「効果」 (2/2ページ)

ディーラーには若い人がMT仕様を求めて試乗に来ることも

 とはいうものの、スポーツクーペである“86”でも意外なほどAT比率が高いとのこと。さらに、よほどのスポーツモデル(MTが当たり前)でもない限りは、下取り査定がMTというだけでダウンするのが現状。MTを選ぶということはある意味、かなりのリスクを背負うことにもなる時代となっている。

 ただ、店頭集客という面ではそれなりの効果はあるようだ。「ウチの店舗でしばらく、6速MT仕様のスポーティモデルの試乗車を用意しておりました。いまどきはウェブページでどんな試乗車を用意しているか公開していますが、隣接県からも試乗を希望するお客様が来店されました。若い人が多かったです。よく話を聞くと近隣エリアのなかで、同車種でMTの試乗車を用意するのがウチの店しかなかったのです」と、某ブランドの新車販売セールスマンは語ってくれた。

 隣接県に住んでいるので、試乗したらそのまま帰ってしまうようなのだが、「それでも、いまどき若い人が進んで新車ディーラーに足を運んでくれるだけでも嬉しいですね。地元で新車買ってもらえればなお嬉しいです」とは前出セールスマン。

 トヨタとしても、過去のようにATとMTの比率を逆転させようと目論んでいるわけではないだろう。「MTってどんな感じなのかな」とクルマへの興味を持ち、試乗してみたいなど、行動に移してもらうフックとして期待しているのかもしれない。

 若者だけではない、リタイアやセミリタイヤした層が、「久しぶりにMTに乗ってみるか」と選ぶことも十分考えられる。

 最近ではGRヤリスが大いに話題になっている。MTへ哀愁を持つオジさん世代だけでなく、MTへの新鮮な興味を持つ若者など、店頭集客力もかなりあるといえるだろう。

 生臭い話となるが、単なる移動手段ではなく、趣味としてクルマを捉え、スポーツモデルでMTを選んでもらえれば、購入時に装着するパーツも多くなり、台当たり利益もぐっとアップするということも否定できないだろう。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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