「買う人がいない」んじゃなく「売り方」に問題あり! 「売れない」国産スポーツカー3台の抱える問題点 (2/2ページ)

価格の高さと需要の見極めの悪さが仇となった

2)トヨタ・スープラ

 スープラはトヨタの中心的なスポーツカーで、1986年に登場した初代モデル(海外では3代目)は販売も好調で人気車となった。1993年の2代目は売れ行きが下がったが、それでも1994年には1か月平均で600〜700台は販売された。

 それに比べると現行型は1カ月平均で約100台だ。メカニズムやプラットフォームの基本部分は、BMW Z4と共通化され、直列6気筒3リッターターボのRZは価格が731万3000円に達する。新型GR86 RZ(351万2000円/6速AT)の2倍以上だ。しかも生産はBMW Z4と併せてマグナシュタイヤー社に委託され、販売店によると「納期は4カ月から7カ月を要する」という。

 ちなみにBMW Z4のM40iは、スープラRZと同じエンジンを搭載して、電動開閉式のソフトトップも加えて価格は866万円だ。2リッターターボのSドライブ20iなら691万円に収まる。日本のトヨタ車なのに割安感が乏しいことも、スープラの売れ行きが伸び悩む理由だ。

3)ホンダS660

 S660は2022年3月に生産を終えると発表されたが、販売は前年の2021年3月に打ち切られた。なぜならS660は生産規模が小さく、生産終了が伝えられると、半月ほどの間に翌年3月までの生産枠が埋まったからだ。

 発売時点における1カ月の販売計画は800台だったが、2019年の1カ月平均は237台、2020年は229台であった。それでも「いつかはS660を買いたい」と考えているユーザーは多く、生産が終わるとなれば注文が多く入った。S660は2シーターのスポーツカーで荷室も狭く、実用性はモーターサイクルに近い。それでもほかのクルマでは得られないダイレクトな運転感覚が魅力だった。

 このようなクルマは、実用的なN-BOXやフィットとは異なり、放っておくと売れ行きが下がる。その一方で潜在的な需要は根強いため、定期的に情報を発信すべきだった。

 そしてNSXにも当てはまることだが、欲しくても買えないユーザーが生じてはならない。最終型も期限を決めて受注を行い、一定の予約金を振り込んだユーザーには漏れなく販売すべきだった。そうすれば中古車価格の高騰といった市場の混乱もある程度は防げる。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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