この記事をまとめると
■ポルシェ・カイエンがVWの工場で作られるようになったりと製造元が変わることがある
■工場により出来が左右されるという声も上がるが現代ではそのような事象は考えにくい
■自動化が進む自動車製造において、職人技が冴えわたるという時代ではなくなってきている
初代MLは「アラバマ・メルセデス」と揶揄された
自動車はグローバルな工業製品だ。そのため、ブランドの本拠地と生産国が異なるなんてことは珍しくない。また、アライアンスが進む昨今では、生産委託のようなケースも増えている。
前者の例でいえば、ホンダのフラッグシップNSXはアメリカ製となっていることが挙げられる。また、日本でいうとトヨタGR86とスバルBRZについては群馬県にあるスバルの工場で作られているようなケースは後者の例となるだろう。
こうしたケースにおいて「そのせいで●●らしさが失われている」といったファンの声も聞こえてくる。はたして、そうしたことはあり得るのだろうか。
たしかに、20世紀にはそうした事象も認められた。
その最たる例といえるのがメルセデス・ベンツの初代MLだ。このモデルは同社の製品として初めてアメリカで生産されたが、初めてということで課題をクリアできなかったのか、明らかに品質が低い印象があった。そのため生産工場の場所にちなんで「アラバマ・メルセデス」などと揶揄された。
とはいえ、アメリカ製ドイツ車はすべてがダメといった風に考えるのは短絡的だ。同時期にBMWから登場したオープン2シーターのZ3 はアメリカ・サウスカロライナ州にある工場で生産されたが、Z3についてはアメリカ製だからという品質の問題が指摘されたという記憶はない。むしろ、アメリカ製であると認識していたユーザーのほうが少なかったのではないだろうか。
また、昔から日本仕様の右ハンドルのドイツ車ではロジスティクスの関係から南アフリカで生産されていることが多い。だからといって、ドイツ車らしくない走りに仕上がっているという指摘もほとんど聞くことはない。アラバマ・メルセデスの一件は、生産地によって変わってしまうという普遍的な例ではなく、大きな失敗といえるレアケースだ。
ところで、最近では「ポルシェ・カイエンはフォルクスワーゲンが作っているのでポルシェらしい走りに仕上がっていない」と主張するファンも少なくないという。