FRでありながら”スバルのAWD感”は予想以上
3)タイヤに依存しない走り! とはいえ上級Sグレードがオススメ
車両本体価格308万円のRグレードは17インチホイールを装着。タイヤは旧型モデルと同じミシュランのプライマシーHPとなるが、基本的な性能や乗り味は、上級のSグレードとほぼ同じと思っていい。低重心で好バランス、屈強なボディ剛性をもつ車体ならではの痛快な旋回フィールなど、新型BRZの大きな美点である物理的な素性の良さは変わらず味わい尽くせる。
ただし、18インチホイールとパイロットスポーツ4を装着するSグレードでは、より確かで強いグリップ感を伴うのは間違いなく、高速域での乗り心地もさらに優れるので、総合的にはSグレードの方が高性能車らしさがあり、動的な質感もより上質なものになる。
また、Rグレードの17インチホイールはデザイン性は良く、表面はハイラスター処理が施されているので、コーティングが施工しやすいというメリットもあるのだが、Sグレードと並べると明らかに車高が高く見えてしまうなど、ビジュアル面では不満を抱く部分もある。グレードの価格差は約18万円であり、内装の加飾もずっと豪華になるので、ホイールを交換する予定のない人は迷わずSグレードを選ぶことを強くオススメしたい。
4)想像以上にAWDっぽい安定感を発揮する
AWDを得意とするSUBARUのクルマということもあり、FRながらまるでAWDのような安定感が得られる方向にセッティングされた新型BRZ。試乗会などでは腕利きのジャーナリストからもそのように評価されたが、長年にわたりSUBARUのAWDに乗り続けてきた筆者としても、新型BRZの「AWD感」は予想以上だ。
高速走行中に大雨に見舞われて路面のμが下がり、SUBARU以外のFRスポーツ車、または旧型BRZでも走行安定性の低下を感じてペースを落としたくなるような状況でも、新型BRZはAWDのSUBARU車とほぼ同じ感覚で駆け抜けられる。低μ路でも沈み込みながら粘るリヤタイヤの落ち着きっぷりと、まるで駆動力が伝わっているのかとさえ思える前輪の確かなグリップ感により、悪天候下でも絶大な安心感を伴うのだ。
長距離移動中、悪天候に見舞われることを想定してAWDばかり選んできた筆者も、新型BRZなら雪シーズンも含めた通年でなんの不安もなく過ごせそうだと感じている。
5)STIドライカーボンリヤスポイラーの効果は絶大
新型BRZはモータースポーツ活動で得られた技術を元にエアロダイナミクス性能が高められ、ノーマルの状態でも極めて優秀な高速ダイナミクス性能を発揮。この空力性能をさらに高めてくれるエアロパーツがディーラーオプションで用意されており、筆者は今回、STIドライカーボンリヤスポイラーを単体で装着。本来は、フロントやサイド部分のエアロパーツによる整流効果と相まって真価を発揮するのだが、筆者はリヤスポイラー単体の空力向上効果を味わうべく、フロントやサイド部分のエアロパーツはあえて装着しなかった(本当は予算が尽きた)。
まず、STIドライカーボンリヤスポイラーはビジュアル面でのインパクト増大効果が強烈だ。吊り下げマウントタイプの巨大なウイングは、やはり圧倒的な存在感を発揮する。スワンネック式のリヤスポイラーがディーラーで買えるのはおそらく世界初だろう。STIのドライカーボンリヤスポイラーの安定性向上効果は旧型モデルでも実感していたが、新型BRZはボディそのものの空力が良くなったので、スポイラー効果は旧型ほどではないかもしれないと予想したものの、高速域での安定性向上効果は本当に絶大で、これまでに乗ったどのSUBARU車よりも高速クルージングが安楽になった。
MTにはアイサイトがつかず、リヤスポイラー購入予算に全力を投じたためカーナビも未装着のまま(つまりオーディオレス)なのだが、ロングドライブがまったく苦にならない。半月で3000kmを走ったことが、ロングドライブの安楽さを雄弁に語っているとも言えるだろう。納車1カ月で5000kmを超えるのは確実。年間6万キロペースになってしまっているので、そろそろ別のクルマに乗る機会を増やすつもりでいるが、新型BRZはそれだけ走りが楽しいクルマということである。