実際に起きた事故と同じ状況を再現して分析
さらに驚きなのは、実際に起きた事故と同じ状況を実験で再現し、構造や作動をチェックすることもあるということ。事故の当事者にも実験現場を見てもらうというのだから徹底している。
こうして得られたデータを数百項目に分けて分析し、ビッグデータを構築している。新たに取り入れた安全技術が効果を発揮しているかを知ることもできる。この蓄積が、けっして大きくはない自動車メーカーを安全性の第一人者に押し上げたのだろう。
多くの自動車メーカー同様、ボルボも安全性を予防安全、能動安全、受動安全の3段階に分けて考えている。ただ日本と違うのは、スウェーデンでは死亡重傷事故の原因としてもっとも多いのは道路外への逸脱ということ。長く厳しい冬がある国ならではだ。
こうした事故では垂直方向の衝撃も大きいことから、なんと無人運転車両でオフロードのクラッシュテストを行い、そのときのデータを参考にして衝撃をやわらげるシートなどを開発しているという。正面衝突ではヘラジカなど大型動物とのアクシデントを想定した対策も行っている。
スウェーデンは社会保障が充実していることで知られている。もちろんそれもボルボの安全性に関係しているとは思うけれど、北欧の過酷な自然環境を安心して過ごすために、通常では考えられないような実験や調査を積み重ねてきたことが、今日の安全神話につながっているのだと思っている。