ステップワゴン・オデッセイ・シビックにもっと力を注ぐべき
さらに軽自動車+フィット+フリード+ヴェゼルになると、国内で新車として売られたホンダ車の85%を占めてしまう。ステップワゴン、オデッセイ、シビックなどは、すべて「残りの15%」に片付けられるから、「狭山工場を閉鎖するならオデッセイも終了する」という本末転倒な判断が生じるのだ。
こうなるとホンダのブランドイメージも変わる。幼い頃からステップワゴンやフィットで育った30歳以下の世代にとって、ホンダは「小さなクルマのメーカー」だ。このままでは「ホンダには軽自動車+フィット+フリード+ヴェゼルがあれば十分でしょう」という経営判断になりかねない。今後は電気自動車や自動運転に向けた投資がさらに高まり、車種を減らしたほうが都合が良いからだ。
そして2021年1〜8月の国内販売順位をメーカー別に見ると、1位:トヨタ、2位:スズキ、3位:ダイハツ、4位:ホンダ、5位:日産であった。ホンダが「国内市場は軽自動車とコンパクトな車種に任せれば良い」と考えたら、販売ランキング順位も4位で定着する。日産に抜かれて5位に下がるかも知れない。
ただしそうなれば、スズキやダイハツと真っ向勝負になる。この2社は低コストの商品開発と販売に慣れているから、ホンダが太刀打ちするのは困難で、状況はさらに危うくなる。
つまりホンダは、ステップワゴン、オデッセイ、シビックといった車種の販売にもっと力を注ぐ必要がある。そこで障壁になるのは、各市場ごとに利益を捉えるホンダの考え方だ。
たとえばシビックは、海外向けに開発された商品だが、販売台数の少ない国内市場だけでも利益を出せる価格設定にしている。その結果、LXは319万円、EXは353万9800円という高価格車になった。これでは売れず、発売から1年も経過すれば、1カ月に1000台の販売目標も下まわる。
シビックはダウンサイジングしたホンダのブランドイメージを奪回する役割も担う車種だから、もっと売りやすくしないとダメだ。
ホンダ車の機能は全般的に優れている。今後は価格や販売方法を含め、総合的な商品力を向上させたい。そうなればブランドイメージや売れ行きも上向くが、もはや残された時間は少ないと思う。