この記事をまとめると
◼︎NSXタイプSのマーケティング担当者にインタビュー
◼︎ホンダは次世代のフラッグシップスポーツカーの研究、開発を引き続き進めていく
◼︎多くの人に「NSXタイプS」を見てもらえるよう、展示イベントなども計画中
これぞNSXの究極形態! 「タイプS」に込められた願いとは?
2代目ホンダNSXが、2022年モデルの「タイプS」を最終モデルとして、2022年末に生産終了となる。2015年のデビュー時からこれまでの販売状況や主なユーザー層、ホンダにおけるNSXの位置付けについて、商品企画・マーケティングを担当する井村佳祐チーフに聞いた。
−−今回発表された「タイプS」は、2022年モデルの全数がこれになるのでしょうか?
井村 そうですね。
−−全世界350台限定のうち、アメリカが300台限定、日本が30台限定とのことですが、残り20台の行き先は……?
井村 カナダとプエルトリコにそれぞれ振り分けられます。その中でアメリカ向けはすでに完売となっています。
−−2代目NSXのこれまでの販売状況についてお教え下さい。
井村 日本での登録台数は464台ですね。登録されずに保管しているコレクターの方もいらっしゃるので、実際にはもう少しあると思います。
−−グローバルではどうでしょうか?
井村 2465台です。
−−この台数は、当初の計画に対してはどのような結果と捉えられるのでしょうか?
井村 日本ではデビュー当初より年間100台を計画していましたので、発売から約5年経って計画通りお届けできたと思っています。アメリカでは正直、販売状況としてはあまり芳しくないですね。
−−今回のタイプSを350台限定として、2022年末でNSXを生産終了することとした理由は?
井村 2代目NSXがデビューしてから5年強経ちますので、ひとつのクルマとしての役割はまっとうできたというのが判断のひとつです。NSXはホンダのフラッグシップということで、ホンダのチャレンジングスピリットを届けてくれるクルマとして訴求できたと考えています。
−−初代NSXは15年もの長寿モデルでしたが、2代目NSXは北米での生産開始から数えても7年弱で生産終了することになります。正直早いと感じましたが……。
井村 そうですね、そういうご意見はよくいただきます。
−−また、今回のタイプSの進化の幅が非常に大きいので、それが1年で終わるのはもったいないとも思います。
井村 最後に昇華させるといいますか、しっかりスポーツカーを究めて終わるというのが、NSXを世の中に出した我々の使命だと、開発陣とも話していますので、そこは手を抜かずにしっかりやっていこうと。
−−先程フラッグシップというお話がありましたが、ホンダさんの近況を考えると、ここでフラッグシップを欠くのは非常に大きな痛手になると思われますが、そこは致し方なし、ということなのでしょうか?
井村 そうですね……何をもってフラッグシップとするかという議論も必要だと思いますが、スポーツという意味ではまたモデルがひとつ減ってしまったというのは……個人的には、非常に寂しいと感じています。ですが、社長の三部が発信していますが、激動の時代の中でも、ホンダの象徴として出せるようなクルマの研究開発は続けていきます。
−−それは、今は検討段階で、これから企画・開発をしていく、ということでしょうか?
井村 そうですね。時代に合った新しい形のフラッグシップがあると思いますので、それを議論していますね。……カーボンニュートラルの流れが、ここ数年でさらに加速しましたよね。メーカーとしてもそれは使命だと思いますし。
−−2040年までに100%EV・FCVというお話でしたが、ゼロエミッションであればその二つに限らなくともよいのではないかというのが率直な思いです。とくにホンダさんはエンジンの価値が非常に高いメーカーですので、トヨタさんが取り組んでいる水素エンジンの開発などは、まさにホンダさんこそもっと積極的になってほしいと感じています。
とくにNSXは時代をリードするクルマですので、ホンダさんらしい超高回転高馬力型の、ホンダミュージックが聴ける水素エンジンを搭載し、サステイナブルということであればボディもカーボンではなく、セルロースナノファイバーのようにリサイクルできるような材料を使うなど、方法はいくらでもあるのではないかと。
井村 ホンダミュージック、いいですね。「そうきたか」というようなものを出すべきですよね。
−−EVのハイパーカーはすでに数多くのスタートアップ企業が手掛けていますので、次のNSXをEVにしても全然新鮮味が出ないと思います。
井村 EVだけではどんどん同質化していきますよね。違いを出すのも難しいですし、そこにホンダがどう味付けするのか……とても大きな課題だと思いますね。
−−2代目NSXでどうしても辛かったのは、ハイブリッドカーにしたことでどうしても重くなってしまったことがあると思います。それで価格も大きく上昇したため、初代のユーザーの中でもついていける人とついていけない人ができてしまったと思いますが……。
井村 その通りだと思います。あの当時でハイブリッドのスーパースポーツは、かなり価値がある提案だったと思いますが……。
−−逆に時代が早すぎましたよね。
井村 いつも言われますね(苦笑)。それもまた面白い所だと思っています。
−−初代はもっとライトウェイトな要素が強くユーザーから求められていたと思いますが……。
井村 NSXユーザーのミーティングでは、実際にそのようなお声もいただいています。