統一されない規格や障がい者を含めた幅広い検証など課題が山積み
現実の高齢社会においては、健常者の視点だけでは安全の確保は難しく、障がい者などを含めた幅広い検証が不可欠だ。なおかつ障害といっても個人によってさまざまであるのはいうまでもない。
EVの車両接近通報装置(低速域で擬音を外へ流し、EVやHVなどのモーター走行車両が近づいていることを知らせる装置)ひとつをとってみても、各自動車メーカーで音色がまちまちだ。視覚障害を持つ人にしてみれば、どれがEVの音であるのかわかりにくい現状が放置されている。
そうした根本的課題では、運転姿勢を正すのに不可欠なハンドルの前後調整機能(テレスコピック)さえ、いまだに軽自動車や小型の登録車では省かれるのがほとんどで、自動車メーカーの交通安全に対する意識が、商売に使える目新しい機能に行きがちになって久しい。
その点で、トヨタの超小型モビリティであるc‐Podは、座席の前後移動量が大きく、ハンドルにはチルトとテレスコピックの両機能が装備されており、改善の動きがないでもない。また、c‐Podはサポカーの対象車両でもある。
運転免許証を返納させたり、限定の運転免許制度をはじめたり、何かひとつをやれば問題が解決するほど交通事故対策は単純ではない。個別の省庁が独自に制度を作り、実施するだけでなく、行政間での調整と業界との連携を踏まえたうえで、総合的な施策としていくことが不可欠だ。
また、公共交通機関の充実した都市部と、個人で移動を確保しなければならない地方との関係、あるいは一極集中的な人口過密と、逆に過疎化していく地域との実情の違いなど、多角的な視野が求められるのである。