「大味」「直線番長」は思い込みだった! レーシングドライバーが乗って「走りに驚いた」アメ車3台 (2/2ページ)

フツーのクーペとミニバンもバランスがいい

2)クライスラー・ネオン

 次にアメ車ショックを受けたのは、クライスラーが1994年にリリースしたネオンだ。当時、北米をはじめ世界を席巻していた日本車に対抗すべく、コンパクトで安価なアメ車として企画開発されていた。1.8〜2リッター直4自然吸気エンジン+3速ATか5速MTが選べ、価格は1万USドル以下。日本では100万円で買えるアメ車として話題となった。

 だが、インテリアの作りや装備は安っぽく、国産車の質感や使い勝手、燃費には遠く及ばない仕上りだった。そして最後の比較テストとしていつもの筑波サーキットに持ち込んで国産車と「バトル」させてみたのだ。

 当初の予想では国産車が圧倒的に有利と見られていたのだが、実際に走らせてみると、ネオンはなんと競合国産車をぶっちぎる速さを見せつけた。アンダーステアが弱く、シャシー剛性が高い。ライントレース性に優れたハンドリングで筑波サーキットの最終コーナーをアクセル全開のままクリアしていける。競合国産車は対角ロールが大きく、みっともない姿勢でコーナリングしている姿とは対象的だった。

「このクラスでレースをするならネオンが最強だね!」とバトルに参加した全員が感心する走りの良さだった。

3)シボレー・アストロ

 またまたシボレーブランドだが、これは自分でも実際に所有していた。1985年に登場し2005年まで生産されていたアストロはFRの商用車である。僕はこのアストロをベースに「スタークラフト社」がフルコンバージョンしたモデルを所有していたのだ。室内は豪華なヨットの内装のようにコンバージョンされ、本革のキャプテンシートや電動ベッドも備わる。当時、サーキットへの移動やパドックでのプライベート空間として大活躍したのだ。

 フルコンバージョン仕様はハイルーフで重量も重くなるのだが、このアストロ、キャビンの居心地だけでなく走りも素晴らしかった。軽いパワステで操作性がよく、商用バンベースの見切りの良い車体デザインで取りまわしにも優れている。

 箱根のターンパイクで先を急いでいた時に、さして飛ばしている感覚でもないのに帯同していたポルシェ911のドライバーから「追いつけない、待って!」と携帯電話で呼び止められたほど。リジットなのにバタツキがなく、重心が高いはずなのにロールが少ない。バランスの良さはネオンやコルベットにも共通していて、アメ車の走りに対する概念が踏襲されていると感じさせられた。

 アストロはアメリカン・スポーツではないが、スポーツ性の高い走りのDNAが注ぎ込まれているといえるモデルだった。

 大きいだけが取り柄のように思われがちだったアメ車だが、実は走りの素性の良さ、基本をきっちりと抑えたクルマ作りは現代の多くのアメ車にも活かされているのである。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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