実際に見たエスパスF1の遊び心に感心しきり
そんな希少なクルマを、僕は見たことがある。エスパスF1は1台をルノーが所有し、もう1台はかつてエスパスやアヴァンタイムを生産していたロモランタン・ラントネという町にあるミュゼ・マトラ、つまりマトラ博物館に展示してある。2005年にそこに行ったことがあるのだ。
外観はキャビンや前後フード、ドアミラーはエスパスそのものだが、ウエストから下はフェンダーはワイドになっていて、おまけに超ローダウン。フロントドアには巨大なルーバー、リアにはこれまた巨大なウイングを備えている。でもゴテゴテ感はなくスマートに仕立てているところはさすがフランスだ。
リヤゲートが開いていたので覗いてみると、3.5リッターV10はむき出しというわけではなかったが、カーボンファイバー製ロールケージに囲まれた穴から、エンジンやサスペンションを見ることができた。
日本人やドイツ人だったらおそらく、こんなに背の高いボディではF1のパフォーマンスに耐えられないと思って、一般的なスーパースポーツの形に行き着くのだろう。現実にそういうクルマも開発中だというし。でも個人的にはそういう考え方、真面目すぎてつまらない。
所詮は遊び。それなら徹底的に遊んだほうが楽しいでしょう。エスパスF1からはそんなメッセージが伝わってくるし、こんなクルマを平然と作るフランスはやっぱり遊びの天才だと、16年前の写真を見ながら感じている。