「追いつけ追い越せ」で各社が本気でセダンを作っていた
3)ホンダ・レジェンド
軽自動車「N360」やコンパクトカー「シビック」で四輪マーケットにおける存在感を示してきたホンダが満を持して高級サルーンカテゴリーに参入したのが1985年に誕生した「レジェンド」からだ。
基本的に乗用車においてはFFプラットフォームだけを展開してきたホンダだけにフラッグシップであってもFFレイアウトを採用。日本仕様は2リッターV6エンジンが主軸だったこともあって、クラウンのライバルというのは少し物足りない印象もあったが、1988年にはF1での活躍をイメージさせる「ウイングターボ」を採用したことが記憶に残る。
そもそも、ホンダが海外で展開しているプレミアムブランド「アキュラ」のために開発されたモデルということで、日本のユーザーだけを考えたクラウンとは異なる方向性を感じさせ、ターゲットユーザーも微妙に異なるという印象が強い。
その後、いくどもモデルチェンジを実施したが、4代目で採用したSH-AWDの“踏んで曲がる”シャシーセッティングは記憶に残るメカニズムだ。
現行型では世界初の自動運転レベル3を実現するなどホンダのテクノロジーショーケースであることは変わりないが、販売規模でいえばクラウンのライバルとは言い難く、今モデルを最後にディスコンとなるのが濃厚だ。
4)三菱デボネア
三菱自動車のフラッグシップ「デボネア」といえば、22年間も生産されたことで知られる初代モデルの印象が強い。
その初代デボネアは、車体サイズはともかく、ポジションとしてはトヨタ・センチュリーに対抗したショーファードリブンといえるモデルだったが、1986年にフルモデルチェンジを果たした2代目モデル「デボネアV」は、V6エンジンを横置きにしたFFプラットフォームとなり、パーソナルユースの高級セダンというポジションへと変身している。同時期のクラウンが初めて「アスリート」という名前の特別仕様車を出したが、それはデボネアがドイツのチューナーAMGと提携したスペシャルバージョンを出したことに影響を受けたとか、いないとか。
そんなデボネアは、続く3代目で早くも失速、1999年にディスコンとなっている。
5)マツダ・センティア
クラウンが全車3ナンバーボディとなった9代目と同じ1991年に、マツダから生まれた新しいフラッグシップモデルが「センティア」だ。
全長4.9m、全幅1.8mといったボディサイズだったが、4WS(四輪操舵)を採用したことで小回りが利き、またフロントに縦置きされたV6エンジン(2.5リッター/3リッター)はかなりキャビン寄りに搭載され、クラウンを超える大柄なボディながら軽快なハンドリングを楽しめるマツダらしいプレミアムサルーンとなっていた。
現在のマツダにも通じる流麗なスタイリングも高く評価された。なお、デビュー当初はマツダの別販売チャネルであるアンフィニで「MS-9」という名前でも販売されていた。しかし、1995年にフルモデルチェンジした2代目では、初代ほどの存在感を示すことができず、2000年にセンティアという名前は消滅した。
とはいえ、マツダは直列6気筒エンジンを縦置きにした新プラットフォームを開発していることを明言している。再び、このカテゴリーにチャレンジする日は間もなくといえる。
そうはいっても、国産高級セダンカテゴリーにおける絶対王者たるクラウンでさえ、FF化、SUV化といったうわさが流れる昨今である。はたして国産の6気筒セダンを求めるユーザーがどれほど残っているのか疑問もあるが……。