ストップ&ゴーのサーキットが得意
ちなみに、現在はモーターの制御を燃費性能の方向に振っていないことからチーム関係者によると31号車の燃費性能は2km/Lに届かない状況だが、それでも、FIA-GT3勢も燃費性能は高くないだけに似たような状況と言える。なお、気になる同マシンのプライスについて金曽監督は「売り物ではないので価格は設定してないけれど“億ション”ぐらいの値段かな」とのことだ。
一方、GRスポーツ・プリウスPHV GTのパフォーマンスだが、「ハイブリッド搭載の31号車はトルク性能が高いからストップ&ゴーのサーキットが得意。でも、車両重量が重いので、コーナリングの多いテクニカルなサーキットに行くと車両の軽いハイブリッド非搭載の30号車のほうが速い」と金曽監督。
31号車のステアリングを握る嵯峨宏紀選手によれば「ハイブリッドのモーターのアシストは感じますよ。ハイブリッドがないと加速がかったるいなぁ……と感じます。とくにZVW30型のプリウスでは高回転型のエンジンが搭載されていたので、ハイブリッドの有り難みを感じていました。現在のZVW50のプリウスは低回転型のエンジンが搭載されていてトルクはあるので、ハイブリッドの電気モーターを高回転域でターボブーストのように使うなど。使い方の部分が課題になっています。富士のストレードエンドでパワーを出したり、全域でまんべんなく出したりと制御の仕方で自由にモーターの出力を変えられるので効率の良い使い方を探っています」と語る。
なお、嵯峨選手はハイブリッド非搭載の30号車もテスト走行の経験があるようで「システム重量が50kg以上もあるので軽快感は30号車がありますね。だから、テクニカルなコースはハイブリッド非搭載の30号車が合っていると思う。31号車は鈴鹿みたいに中速コーナーがダラダラと続くようなコースがあっているかな。31号車は重たいけれど、それを補えるようなチューニングをしない限り、ハイブリッド搭載車の旨みがない。通常のセッティングに加えて、そういったモーターの制御もあるのでハイブリッド搭載車はやることが多いですね」とのことだ。
ちなみにaprは2020年にGRスープラGT300を開発し、埼玉トヨペットGreen Braveにマシンを供給。2021年にはLM corsa、Max Racingに同マシンを供給しており、GRスープラGT300が予選や決勝で躍進しているのだが、apr自体がGRスープラにスイッチすることはないという。
「レースは勝ち負けも重要ですが、開発の舞台でもあり、量産車やSDGsに繋がっていく方が価値は高いと思う。優勝とかチャンピオンなどの印象は一年しか残らないけれど、未来のためのハイブリッドを開発する方が残るものが多い。そういった意味ではGRスープラよりも次期プリウスのうほうがチームとしては気になりますね」と金曽監督。
さらに「当初、ハイブリッドは燃費を気にする年配者に向けたようなクルマというイメージがあったと思いますが、スーパーGTの活動を通してハイブリッドやプリウスのスポーツイメージが高くなってきたと思います。プリウスは先の時代のクルマだから、モータースポーツでも先のチャレンジをしていきたい。その経験が市販モデルにもフィードバックされていくので、aprとしてはその部分に力を入れていきたいですね」と金曽監督は語っているだけに、同チームのプリウスでのスーパーGT参戦は今後も続いていくに違いない。