パワー&トルクも向上して2794万円! 最後の「NSX」 となる「タイプS」日本仕様の全容を公開 (2/2ページ)

インテリアもパワーユニットもタイプSを名乗るに相応しい仕様!

 デビュー当初より課題だったインテリアも質感向上が図られている。

 アルカンターラがピラーやセンターパッドに用いられたほか、ステッチの配置がより精緻に。グローブボックスとキーレスエントリーユニットにType Sロゴ、ヘッドレストにNSXロゴが入ることで、所有する喜びが高められた。

 同時にシートのカラーバリエーションも一新。セミアニリンレザー×アルカンターラシートは従来より赤の色味が変更されたニューレッド、エボニー、オーキッドの3種類、セミアニリンフルレザーシートは同じくニューレッドとエボニーの2種類となっている。

 そして肝心の走りも、2019年モデルへのマイナーチェンジの際以上に、大きく手が加えられている。

 なかでも最大のトピックはパワートレインだろう。3.5リッターV6直噴ターボエンジンは、ターボチャージャーが高耐熱材を用いたものに変更され、過給圧は5.6%アップ。これに合わせてインジェクターは燃料噴射流量が25%高いもの、インタークーラーもフィンピッチが変更され放熱量が15%高いものとなった。その結果、エンジン単体の最高出力は16kW(22馬力)高い389kW(529馬力)/6500〜6850rpm、最大トルクは50N・m(5.1kgm)高い600N・m(61.2kgm)/2300〜6000rpmへと大きく向上した。

 フロント2モーター・リヤ9速DCT内蔵1モーター式の「スポーツハイブリッドSH-AWD」も進化した。IPU(インテリジェントパワーユニット)はバッテリー出力が10%・7馬力、使用可能容量が20%引き上げられ、フロントのツインモーターユニットは20%ローレシオ化。パワートレイン全体でのシステム最高出力は581馬力から610馬力、システム最大トルクは646N・mから667N・mとなった。

 そのほか、9速DCTには減速側パドルを0.6秒ホールドすることで瞬時にもっとも低い適切なギヤへシフトダウンする「パドルホールド・ダウンシフト」を、ホンダ車で初めて実装。エンジン音のマネジメントも、アクセル操作に応じて吸気音が大きくなるよう、また高周波の成分がキレイに出て、エンジン回転数が上がるとともに和音となるよう、チューニングを施している。

 ハンドリングも進化した。前述のホイール幅&トレッド拡大に加え、タイヤも従来のコンチネンタル・スポーツコンタクト6からNSX専用設計のピレリPゼロ(HO)に銘柄を変更。磁性流体式のアクティブダンパーシステムも、最小・最大側とも減衰力の幅が拡大され、街乗りからサーキットまであらゆる走行環境に対応できるようになった。

 そして、「QUIET」「SPORT」「SPORT+」「TRACK」の4モードから選択できる「インテグレーテッド・ダイナミクス・システム」は、これらの改良に合わせ、全モードとも制御が変更されている。

「QUIET」ではEV走行時の加速性能を高めつつEV走行領域を拡大。「SPORT」「SPORT+」ではコーナー進入から立ち上がりまで加減速レスポンスとライントレース性を向上させた。「TRACK」ではドリフトを許容するコントロール性を持たせつつ、エンジンサウンドの一体感を高めている。

 NSX2022年モデル唯一のグレードとして設定されるこのタイプS、世界限定350台のうち、日本に割り当てられるのはわずか30台。車両本体価格は2794万円と、絶対的には高価だが、その進化の大きさを考えるとバーゲンプライスと言ってよく、9月2日の購入申し込み受付開始当日に完売となる可能性は高い。

 2022年12月の2代目NSX生産終了まであと1年4カ月。それ自体は非常に残念だが、最終モデルとして「タイプS」を設定し、全面的に進化させてくれたホンダに、心から感謝したい。そして、遠くない未来に次のNSXが生まれることを、心から願っている。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
趣味
ゲーム
好きな有名人
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