ヨーロッパで2WDのSUV人気に火を付けたのは日本車だった!
ちなみにフランス辺りでSUVはハッチバックに対して「ヴェルジョン・シュルエレヴェ(version surélévée、上にもち上げたバージョンの意)とも呼ばれ、共有プラットフォームでステアリングポストや着座位置やルーフ高ごと底上げしたものと思われている。
ルノー・キャプチャーのヒットはクリオ(日本名ルーテシア)の下地があってこそだし、プジョー2008と208、シトロエンC3エアクロスとC3然り。ジープ・レネゲードは4WDも揃えるがFFモデルが圧倒的人気なのは欧州も同じで、これとてフィアット500Xの兄弟車というか、イタリア人にとってはアメリカの従兄弟ぐらいの安心感で選ばれている雰囲気は否めないので、故マルキオンネのクライスラー買収は偉大な一手だった。
だがFF2駆ベースのSUVに火をつけたのは、日本車が先駆だった。古くは初代RAV4やCR-Vのスマッシュヒットに遡るが、別に欧州のユーザーにとって4WDは要らなかった。FFメインで開き直った日産の初代キャシュカイ(日本名デュアリス)は空前絶後のヒットとなり、リーマンショックの前後から欧州メーカーらに独自のクロスオーバーSUV開発を促した。
こうして販売ネットワークで地の利のある欧州メーカーが、お膝元でクロスオーバーSUVを次々ヒットさせているのだ。今や欧州では、欧州メーカーのSUVのほうが、日本車よりデザインが先進的で、高速域での操安性に定評がある分、選好されやすい。はっきりいえば、日本車の内外装デザインは一部を除けば5~10年ぐらい遅れているというのが、あちらの評判であり、感覚だ。
クロスオーバーSUVは電動化を前に、ジレンマにある。ハッチバックよりバッテリーを積むスペースがある分、PHEV化はできても開発コストがかかる。そもそもCセグほど万能性が求められないBセグは街乗り用途の比重が大きいので、PHEVである必要性に乏しいかもしれない。いっそEV化してコミューター化する方がBセグSUVの用途には沿うはずだが、エコ減税なき後の車両価格の高さをユーザーが許容できるはずもない。また日本と同じく、集合住宅の多い都市部では、急速どころか普通充電の方法を確保するにも、難しい一面もある。完成度の高いスモール・クロスオーバーSUVは、今がもしかして旬かもしれないのだ。