見た目と実用性を両立した「4ドアクーペ」
クルマのボディ形状には、ご存じの通り、セダン、クーペ、ステーションワゴン、SUV、ミニバン、さらには軽自動車ではスーパーハイト系など、さまざまな呼び名、カタチがある。自動車の基本と言えるセダンは、たとえばトヨタ・クラウンなどを想像してもらえばいいのだが、ボンネット/キャビン/トランクが独立した3ボックスの乗用車だ。ちなみにセダンはアメリカ、同義語のサルーンはイギリス由来の呼び方である。これがイタリアになるとクワトロポルテとなる。
セダンは4ドアであることが必須だが、同じ4ドアでも「4ドアクーペ」なるものがある。セダンとどう違うのかと言えば、プラットフォーム、下半身はほぼセダンなのだが(ベース車と同じという意味)、クーペの流麗なルーフライン、リヤセクションなどをデザイン性で用いつつ、4ドアとしたのが4ドアクーペ。メルセデスベンツのCLSあたりを想像してもらえば分かりやすいと思う。ベースはEクラスセダンで、それにクーペのようなゴージャスな上半身を持つ1台だ。
ただし、流麗なスタイリングを演出するため、ルーフが低まり、キャビンの頭上方向の余裕、乗降性についてはセダンよりやや後退するのが普通である。また、ホンダ・クラリティも、デザイン的には4ドアクーペと呼んでいいと思われる。
SUVでも初代ホンダ・ヴェゼルがそうであったように、下半身はSUV、上半身はクーペというエクステリアデザインが、今も世界的に人気絶大であることからも分かるように、クーペ的上半身デザインはさまざまな車種で用いられ、トレンドになっている。
新しいメルセデスベンツGLAもまさにそうで、GLBのいかにもSUV的なデザインとは一線を画したクーペライクでスタイリッシュかつカジュアル感ある上半身が個性、特徴となっている。
意外なる4ドアクーペと言えるのが、マツダのスポーツカー、RX-8だろう。カタチは紛れもなくスポーツカーだが、センターピラーレスではあるものの、目立たないようにはデザインされた観音開き式のリヤドアをしっかり備えている。スポーツ4ドアクーペとして分類できそうなクルマと言っていい。
4ドアクーペは、クーペのようなスタイリングのクルマが欲しいけれど、ファミリーカーとしてリヤドアは不可欠、そんなユーザーに向いている。クーペライクなルーフラインから、全高が低めになっている例も多く、後席乗降性、居住性でやや不満アリの車種もあるにはあるが、全高の低さによるデメリットを感じにくい、前後席ともにゆったりできるモデルも少なくない。