CO2削減のためには個人の意識改革も必要だ
自動車工業会(自工会)の豊田章男会長は、「自動車は一度世の中に販売されると、30年~40年にわたって市場へ出ていく。クルマを作るということは技術力があればできるけども、クルマを作ったあとに、40年、ユーザーやいろんな変化に対応する覚悟は持っていただきたい」と、述べている。
別の記者会見では、「カーボン・ニュートラルは、自動車メーカーだけでは達成が難しい」とも語り、利用する事業者の協力が欠かせないとの姿勢を示した。発言の背景は物流を想定したものだが、商用車より台数の多い自家用車のことを考えれば、個人での協力も不可欠だ。
アイドリングストップ機構を切って使う利用者が多い市場もあるというが、販売店の協力を通じ、アイドリングストップの意義を消費者へ伝え、意識改革を促していくことも大切だろう。
豊田会長は、「100年に一度の大変革」と危機感を募らせている。変革とは、物事を根底から変えて新しくする意味だ。
CASE自体、それを促す取り組みである。情報・通信を通じた連携(つながり)や、自動運転、共同利用などは、世界13億と言われる保有台数を大きく削減する手段である。それによって、環境問題はもとより、資源も解決の道を探り、同時に、消費者の利便性は維持できる。
ライフサイクルで考えても、直噴ガソリンエンジンが増えた今日、エンジン停止のクランク角を制御することにより筒内へ燃料を噴射するだけで再始動させる技術が開発されている(実際には万一を想定してスターターモーターを装備する)。それがマツダのi-STOPだ。
あるいは、空調システムに蓄冷剤を活用することで、アイドリングストップ中の冷房効果を1分持たせる技術もある。スズキのエコクールがそれだ。これなら軽自動車にも適用できる原価になるだろう。
環境への負荷は運転中の比率が高く、CO2削減効果は大きい。自工会の豊田会長の言葉は、ひとつひとつ重い。自然災害の甚大化が世界的に拡大しているいま、できることを総動員しなければならない状況下にあって、その手段を前世紀へ戻すことには賛成できない。