衝撃の事実! ゴルフは日本一販売台数の多い輸入車ではなかった
過日、筆者宅のMacBook Airにピロリ~ンと1通のメールが届いた。送り主はWEB CARTOPの編集者で、「歴代ゴルフはなぜ褒められるのか? 毎回コンパクトカーの世界を圧倒できる理由を書け」との内容であった。
はて面妖な。私の記憶によれば、ちょっと前のWEB CARTOPで「フォルクスワーゲンを代表する車種『ゴルフ』はなぜここまで愛されるのか(TEXT:WEB CARTOP)」という、似たタイトルの記事がすでに公開されていたはず。
「となれば、これは誤発注だな……」と思い、私は編集部に「何かの間違いではないでしょうか?」と断りの連絡を入れた――というのは大嘘で、連絡は入れず、今こうして類似の原稿を書きはじめている。
なぜならば、誤発注だろうが何だろうが、書けばいくばくかのマネーをいただけるからである。いちおう発注された以上、「あれはなかったことに!」と後から言われても私は知らぬ。払うものは払っていただく。
ということで、書こう。守銭奴として、餓鬼として、「歴代ゴルフはなぜ褒められるのか? 毎回コンパクトカーの世界を圧倒できる理由」を。
……とはいえ、本当に歴代ゴルフは「褒められ」ているのだろうか? そして、「毎回コンパクトカーの世界を圧倒」しているのだろうか? 申し訳ないが、私にはそういった印象があまりないのだが……?
まずは事実関係から見てみよう。日本自動車輸入組合が発表した「外国メーカー車モデル別新車登録台数順位の推移(2006年度~2020年度)」である。
それによれば、確かに2006年度から2015年度まではフォルクスワーゲン ゴルフが10期連続で1位となっており、台数差からすると「圧倒」というほどではないにしても、まぁ連続して1位に輝いたということで「毎回コンパクトカーの世界を圧倒」というのも決して間違いではなかったのだろう。
だが2016年度から2019年度は1位の座をミニに明け渡し、ゴルフは2位に後退。そして2020年度は6位にまで沈んだ。さらに2021年度上半期はベスト10圏外となり、11位にまで後退しているのだ。ちなみに2021年上半期の順位は下記のとおりである。
2020年度上半期輸入車販売台数
1位 ミニ 9135台
2位 フォルクスワーゲン T-Cross 5193台
3位 BMW 3シリーズ 4566台
4位 ボルボ 60シリーズ 4145台
5位 フォルクスワーゲン T-Roc 3854台
6位 メルセデス・ベンツ Aクラス 3838台
7位 ジープ ラングラー 3749台
8位 フォルクスワーゲン ポロ 3578台
9位 ボルボ 40シリーズ 3368台
10位 メルセデス・ベンツ GLB 3123台
11位 フォルクスワーゲン ゴルフ 2885台
もちろん2020年度の6位および2021年度上半期の11位というのは、「つい先日まで販売されていたゴルフ7がモデル末期だったから」というのは明らかである。そして2021年6月にゴルフ8が発売されたことで、2021年度の下半期も含めれば、ゴルフがトップ10圏内に返り咲くだろうこともほぼ明らかである。
しかし、ゴルフ7の発売から3年後の2016年から始まった「微妙なダウントレンド」または「圧倒的な王者とは必ずしも言えなくなった状況」からすると、「毎回コンパクトカーの世界を圧倒」というのはちょっと違うのではないか? と思うのである。
相変わらずトップレベルに売れる輸入コンパクトカーであるのは間違いないが、「圧倒っつーほどではないのでは?」というのが私の見解だ。
事実、私の超狭い生活圏(東京都世田谷区と目黒区の境目ぐらい)で観察する限りでも、この界隈の保有台数ランキング(あくまで印象)は下記のとおりとなっている。
伊達軍曹生活圏輸入車推定保有台数(※伊達軍曹印象)
1位 BMW 3シリーズ(色は白)
2位 メルセデス・ベンツ Cクラス(色は白)
3位 ミニ
4位 いろいろな国産SUV
5位 いろいろな輸入SUV
6位 フォルクスワーゲン ゴルフ
……かなりテキトーな集計だが、少なくとも「世田谷区と目黒区の境目において、フォルクスワーゲン ゴルフがコンパクトカーの世界を圧倒しているという事実はない」とは断言できる。輸入車および輸入コンパクトカーの嗜好は以前よりもずっと多様化し、細分化されているのだ。