先代そっくりな新車を出す真意とは?
しかし、自動車メーカーとしては、新型を開発するにあたり、新型らしい新鮮さをエクステリア、インテリア、機能、装備、走りでアピールするのが当たり前である。なのに、どうして上記のような先代酷似の見映えの新型車を登場させるのだろうか。
ひとつは、先代(初代)のデザイン性が評価され、人気の原因、アイコンになっている場合だ。だからデザインを大きく変えるということは、リスクが伴う冒険になる。ライバルを寄せ付けない魅力的なデザインならば、あえて大きく変える必要はない……という判断である。実際、ホンダN-BOXは、1代目から先代酷似の2代目となっても、ますます売れ行きを伸ばし、日本でもっとも売れているクルマとなり、人気はまったく衰えない。そう、先代酷似の2代目も、キープコンセプトによって大成功した新型車なのである。
スバル・レヴォーグの2代目については、エクステリアデザインこそ先代酷似なものの、インテリアの質感、デジタルコクピット、もちろん最新のアイサイトXの搭載など、中身の新しさ、先進性、走りの進化で勝負している(そこが日本カー・オブ・ザ・イヤーで評価され、大賞を受賞)。そもそもコンパクトクラスのステーションワゴンの普遍的なエクステリアデザイン、パッケージは大きく変えようもないのである。
個人的には、先代酷似の新型車は、さらなるメリットがあると思っている。それは先代ユーザーへの配慮だ。ヴィッツ→ヤリスのように、誰がどう見ても別物のクルマになってしまうと、先代型は一気に古びて見えてしまう。大切に乗り続けようと思っていても、その気がそがれてしまいがちだ。しかし、先代型に乗っていても新型がキープコンセプトの先代酷似のデザインであれば、古さを感じにくく、乗り続けやすいのだ(新車を売りたい自動車メーカーとしては困ってしまうが)。それどころか、先代酷似の新型車が登場した先代モデルのユーザーは、5年、10年経っても古びないであろう、愛車(旧型)のデザインを誇らしく思っていい。結果論だが、とてもいいデザインのクルマを選んだことになる。