乗って確信! 「これは新時代のホットハッチだ」
まずはそのスポーツ然とした佇まいだけでもいいのだが、走りの性能はさすがにNISMOと言うべきレベルの違いを披露した。もちろんタイヤのグリップ性能の高さがすべてを変える。まずはリヤの接地性と安定性の高さである。
「FFのリヤなんてタイヤが付いてりゃいい!!」……という発想は古くからあるが、欧州車はソレを安定性と曲がるための重要な要素として前後バランスにこだわる。国産車とは違う味付けや操縦安定性を披露するのはそのせいだが、オーラNISMOは、まさにそのリヤを接地安定させて、フロントタイヤは曲げるための舵取り役に徹して(もちろん動力と旋回と減速のすべてを含む)いる。
タイヤのグリップレベルに合わせてサスペンションはフロントを36%、リヤは25%ハードに、つまりロール剛性を高めた。ステアリングの切り始めからレスポンス良くスッとノーズは応答する。けして過敏ではない。操作に遅れがないから、ドライバーが操作すると同時に想像どおりに姿勢は変わる。これがいい。
もちろんリヤがドッシリ大地を捉えて踏ん張るからなのだが、ドライバーはそんなことを考えず、フロントの動きにだけ注目すればいい。リアは素直に追従するが、タイヤ、サスの違いだけではなく、ボディ構造の最後端部に左右を渡す補強プレートを取り付けたことによる剛性アップもおおいに効いている。
ノートで気になるのは80〜100km/hの高速巡航中に波状路を通過すると感じられるフロアのブルブル共振だ。それはオーラで少なくはなったが、オーラNISMOはどうか? と言うとタイヤとサスの違いで振動が抑え込まれている。いや正確に言うと共振するポイントがずれた結果、乗員が感じにくくなったと言える。が、まだ基本的には残る。
踏むと同時に応答するモーターの出力特性とエンジン回転を微妙にずらして、発電機に徹しさせる方法は日産e-POWERの最大の特長であり魅力。モーターは基準車のオーラと同様136馬力のパワーと300N・mのトルク。これに発電機たる1.2リッター3気筒エンジンは82馬力/103N・mで電力供給。モーターは、大人数が乗るミニバンやSUVを余裕で引っ張る動力性能で、1270kgの車重にはまさにスポーツカー感覚のパワーウエイトレシオで余裕余裕。アクセル操作に対するレスポンスも自然である。アクセルを踏むと同時、一切の遅れがなく応答する事にドライバーは一体感を感じるし、実際操作に対して忠実にクルマの加速が再現されるそれこそが扱いやすい。
それはドライブモードがNORMAL状態で十分である。加速力でNORMALモードはレベル8。最強はNISMOモードでレベル10。逆にECOモードはレベル6にまで絞られるから、加速は一瞬まどろこしさを感じる。
逆にNISMOモードは実際に速い。速いが、どこかドライバーが意図する以上にスロットルを開けている感は否めず、個人的には回生ブレーキが最強のECOモードとNORMALモードを切り替えながら走行する事がe-POWERの効率のいい扱い方だと思う。
走りなれたグランドライブ、古くは日産・追浜のテストコースとしていまもその名残は急角度でターンするバンクが残されている。いつもは直線速度を抑えさせる意味から、直線は全長の3ぶんの2程度の距離しか走行させない。
しかし今日は高速コーナーから直線にそのままつながる。全開加速時のオーラNISMOのメーターは、175km/hを示したところで直線は終わる!! それがどれだけの意味を持つのか!? 直進安定性が”素”のノートとは比べ物にならないほど良い。リヤが微動だにしない安定性。やはりリヤタイヤの接地性と外乱の入力を受けた際にトー変化し難いサスの仕上がりが大きくモノを言う。
驚きの事実は、175km/hの速度ではバッテリー残量はみるみる減る。しかしその速度でいる限り、つまりアクセルを踏み続けている限り、エンジン発電〜バッテリーへのチャージはその速度を維持するだけの電力供給を行なう。もちろんアクセルをわずかでも戻せば、バッテリー残量がないなりの加速しかしなくなる。
最高速はもう少し伸びそうだ。日本国内では使う事のない数値だが、常に動力性能に余裕があると思うと、スポーツ性抜群のNISMOの走りだが、どこかに精神的な余裕も生まれる。
オーラに対して27万円アップの価格が魅力のオーラNISMO。但し日常の必需品となる装備はセットオプションとなり、Bセグメントにしては高額なモデルになる事は間違いない。EV主体のレンジエクステンダーでスポーツできるe-POWER、個人的には現状、どのハイブリッドよりも好みだし事実、優れていると思う。