ホイールベースの延長が走りの面でもいい方向に作用
運転席に着席し、メーターまわりをチェックすると、まずはドライバー正面に10.25インチのデジタルコクピットメーターが配置され、ダッシュボードセンター上部にかけて10インチの液晶モニターが並び、インフォテイメントシステムを構成している。その所作はゴルフHBと同じだ。
エンジンを始動し、シフトセレクターをDにして走行開始。エンジンは3気筒ながら静かで、よく制振されている。エンジンは小型でエンジンルームのほぼ中央にマウントされているが、そのエンジンマウント容量が大きく、VW(フォルクスワーゲン)社の特徴が盛り込まれていた。DSGの制御も熟成し、スムースな走り出しだ。
この1リッターエンジンはミラーサイクルの燃焼制御が採用されており、燃焼温度を下げることでVTG(バリアブルターボジオメトリー)を採用することが可能となったという。ゴルフ ヴァリアントには1.5リッターの4気筒ガソリンターボ仕様もラインアップされているが、そちらは通常のオットーサイクルエンジンでターボチャージャーもノーマルタイプのものを採用している。
発進や加速の場面ではBSGがエンジンパワーをアシストし、加速性を高めている。BSGは9.4kW(13馬力)の出力と62N・mのトルクを引き出せ、エンジンの負担を軽減させる。また、減速時にはエネルギーの回生ジェネレーターとしても機能しているのだ。
さらに、走行中にアクセルを戻すと慣性走行を可能とするコースティング機能が作動し、メーターに表示が出て燃費走行の役に立つのだ。
エンジンの出力スペックは81kW(110馬力)/5500rpmで最大トルク200N・m/2000-3000rpmとなっていてBSGと合わせても1360kgの車重に対しては十分とは言えないが、市街地域での日常的な使用場面においてはパワー不足を感じることはないだろう。
今回、全長やホイールベースが長くなったのにもかかわらず、最小回転半径は5.1mと小さくなっていて、取りまわしの良さは格段に向上している。これは前輪の転舵角が大きく取られたためで、コンパクトなエンジンだから可能となったともいえるのだ。
その走りを支えるサスペンションもゴルフHBと同じだ。フロントストラット、リヤトーションビーム方式で素材も共通。ただ、ハンドリングや乗り心地はヴァリアントのほうが格段に良かった。ダンピングが効いたストローク感のあるサスペンションの動きは往年のゴルフを彷彿させる乗り味で、ワゴンボディによるリヤ荷重の増大による前後重量配分の向上なども好作用しているようだ。
また、ホイールベース拡大により後席足もとは広くなり、ヘッドクリアランスも十分に余裕がある。荷室の使い勝手、容量も大きく、使える度が高まった。
新型ゴルフ ヴァリアント、試乗モデルの価格は326.5万円と価格設定もリーズナブルで、またまた同クラスの国産競合モデルに「ヴァリアントショック」を与えることとなりそうだ。