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また昭和の時代には「陸(おか)サーファー」というのがいて、サーフィンなどやったことがなく、それどころか泳げもしないのに、ステーションワゴンのルーフにサーファー気取りでボードを載せている人がいた。
それと同様に、昭和の時代によく見かけた「ハワイっぽいステッカー」をバンやステーションワゴンに何枚もペタペタ貼っていた人たち。あの人たちのことを、純真な少年だった私は「すげえなぁ。ハワイ、俺も行ってみてえなぁ!」なんて思っていたのだが、あの人たちも「じつはハワイには1回も行ったことがありません」という“ステッカーチューンの人”だったのかもしれない。まぁわかりませんが。
またさらに、これはステッカーチューンとはほぼ関係ない話になってしまうのだが、昭和時代のタクシーはコラム式のMT車が多かったが、一部で導入が始まったAT車のリヤウインドウには「4速AT」という、白い文字のけっこう大きなステッカーが貼られていた(3速ATだったかもしれない)。
……あれはいったい何だったのだろうか?
考えられることとしては、以下の2つがある。
●推論1:顧客獲得のためのステッカーだった。
当時としては先進的な4速AT車であることを路上で顧客候補に知らせることで、「どうせ乗るならそこのギクシャクするMT車のタクシーじゃなく、変速ショックの少ないこのAT車をつかまえせんか?」とアピールしていた。
●推論2:乗員確保のためのステッカーだった。
「長時間運転し続けるタクシードライバーになるとしたら、はっきり言ってMT車の運転はかったるい。できればノー変速でイケるAT車に乗りたい」と考える“乗員候補”に向けて、「我が車のタクシーはATだからラクですよ! だからウチに就職するといいですよ!」と宣伝していた。
どちらもあり得る話に思えるが、しかし上記の推論1または2の効果をよりいっそう確かなものとするためには、車両の後方ではなく「前方部分」に貼るべきだろう。一般人にとってタクシーというのは普通、後ろからはあまり見ないものだからだ。
しかしフロントウインドウに「4速AT」のステッカーを貼ることは、道交法の関係で不可能。それゆえ次善の策として、昭和のタクシー会社はあのステッカーをリヤウインドウに貼っていたのだろうか?
……わからないことが多く、そしてもはや忘れてしまったことも多い、昭和時代のステッカーチューンにまつわるお話でありました。どうもすみません。