美しさと高いコーナリング性能を併せ持つスーパーカー
ちなみにミウラとは、スペインの闘牛(ファイティング・ブル)の生産牧場の名で、ある日ランボルギーニのカスタマーとともにこの地を訪れたフェルッチオが、ミウラを車名に使用して良いかどうかを聞いただけで、金銭的な負担はまったくなくその使用が許可されたものなのだという。実業家としてのフェルッチオの腕はなかなかではないか。
ミウラのミッドに搭載されたエンジンは、4リッターのV型12気筒DOHC。正式な車名である「P400ミウラ」の400という数字はこの排気量を意味し、またその前のPは、イタリア語でPosteriore、エンジンが後方に搭載されていることを示している。P400ミウラの最高出力は350馬力。そのハイパフォーマンスと優雅なスタイルから人気を博し、1969年までに475台が生産されたとされる。以後ミウラ・シリーズは、「P400ミウラS」(370馬力)、「P400ミウラSV」(385馬力)へとマイナーチェンジを行っていく。
Sまではヘッドライトのまわりにまつ毛のようなフィンが、またSVではそれがなくなった代わりに、よりワイドなリヤフェンダーが与えられたのが外観上の特徴となっている。生産台数は各々1971年までに140台、1973年までに150台というのが定説とされている。
筆者は2016年、つまりミウラ生誕50周年の年にランボルギーニに招かれ、「ザ・イタリアン・ジョブ・リローデッド」のタイトルのもとで開催されたイベントに参加することができた。これはミウラが登場する映画、「イタリアン・ジョブ」の再現版ともいうべきもので、北イタリアのサンベルナール峠、その山の通行を完全に封鎖して、ランボルギーニ・ミュージアムが所有する2台のミウラを自由に楽しむことができるという、実に刺激的なイベントだった。注意事項はただひとつ、「ドライブに集中しすぎてガス欠にならないこと、ここに戻ってくれば、ガソリンはいくらでもあるからな」だった。
そんな言葉で送り出された不肖ヤマザキ。なんかこの展開はいつかのグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにも似ているけれど、今回はミスって落ちたら笑いものになるばかりか、命さえ危ない。しかもクルマはランボルギーニのクラッシックカー部門、ポロ・ストリコが仕上げたビッカビカのP400SVだ。冗談で済むわけがないだろ。
というわけで、最初はビクビク運転していたP400ミウラSVだが、こいつはやはりミッドシップ。そのコーナリング性能はとても魅力的だ。でも正直スピンしなくてよかった。スピンなんかしたら、クルクル回って絶対に後ろからドーンだもの。いやはや貴重な経験をさせていただきました。