ハイパワーと引き換えにファンが去ってしまった例も
3)ホンダ・シビックタイプR
同様にエンジンでキャラが立っていたモデルといえば、ホンダのシビック・タイプRだろう。初代のEK9では1.6リッター自然吸気の「B16B」型を搭載。2代目のEP3、3代目FD2の2台については2リッター自然吸気の「K20A」型を搭載していた。タイプRユーロ(FN2)は2リッター自然吸気の「K20Z」に進化したが、ここまではホンダVTECに期待する高回転ユニットだった。
しかし、いったん歴史の途切れたシビック・タイプR(FK2)が2015年に復活したとき、そのエンジンは2リッターターボ「K20C」へと大変身を遂げる。FF世界最速を目指すという新コンセプトを掲げたシビック・タイプRにとって自然吸気エンジンからの脱却は当然の判断といえたが、それまでターボを倒せる自然吸気「VTEC」エンジンの魅力に憑かれていたタイプRファンからすると、裏切られたような思いもあったようだ。
とはいえ、ターボになってシビック・タイプR(FK8)が圧倒的な速さをみせると、そうした批判の声はあまり聞かなくなった印象がある。ポルシェ911のときもそうだったが、大きく変わったタイミングでは反発があっても、それが続くことでユーザーは受け入れるのだろう。
4)BMW1シリーズ
最後に紹介したいのは、BMWの1シリーズだ。2004年に初代が誕生した時には世界的にFFばかりだったCセグメントの中で、唯一のFRということで話題となった。FRで前後重量配分50:50にこだわってきたBMWの面目躍如といえるモデルだったのだ。
そんな1シリーズは、2代目でもFRプラットフォームを堅持したが、2019年に現行型となる3代目にフルモデルチェンジしたとき、ついにFFプラットフォームに大変身を遂げた。基本設計としてはBMW MINIの発展形で、エンジンも同系統の1.5リッター3気筒ガソリンターボ、2リッター4気筒ディーゼルターボを搭載している。
そして1シリーズのトップグレードとなるのがM135i xDriveで、Mの名前にふさわしく最高出力225kW(306馬力)の2リッター4気筒ガソリンターボを積み、そして最大トルク450N・mを4WDの駆動系によって路面に伝える駆動系を与えられている。つまり後輪でも駆動するスポーツカーになっているのだ。
とはいえ、車検証で確認するとM135iの軸重は前940kg・後640kgとなっている。FFベースの4WDとしては、この前後重量配分はけっして悪いものではないが、BMWが長年言い続けている50:50の重量配分とはずいぶんと違っている。もっとも、1シリーズを選ぶようなユーザーはそこまでFRであることに、こだわっているわけではないようだ。FF化に失望したBMWファンは、1シリーズには手を出すことはないだろうから、実際のユーザー層からは失ったユーザーを想像するのは難しいのも事実だ。