ディーゼルを愛してきたものにとっては音と振動が愛おしい
80年代から2000年代にかけては、欧州取材の際に欧州メーカー各社の乗用ディーゼルを試乗してきた。
また、2010年代になってから現在に至るまで、日本国内では日系のディーゼル車を複数、日常生活のなかで使っている。
こうした実体験のなかで改めて感じるのは、ディーゼルエンジンの音と振動の進化だ。
周知のとおり、ディーゼルエンジンはエンジン気筒内の圧力をガソリンエンジンに比べて高く保った状態で高圧のディーゼル燃料を気筒内に噴射することで気筒内燃焼を起こす仕組みだ。そのため、ガソリンエンジンと比べて振動が大きく、これがカラカラ音として空気中に伝わりやすい構造にある。
近年のディーゼルエンジンは、ディーゼル燃料をより高圧で維持し、さらに電子制御された的確な噴射工程によって気筒内燃焼の効率を上げることで、振動が軽減され、その結果として音も小さくなってきた。またエンジン内部にバランサーなどを組み込むことで機械的に振動を抑制する手法も取られている。
そのほか、エンジン外部に出た音については、防音材を適材適所に配備することで車内に伝わる音の軽減を進めてきた。
だが、そうしたディーゼルエンジンの技術開発が今、大きな転換期を迎えている。
欧州では2035年にガソリン車とディーゼル車、さらにはハイブリッド車も含めた内燃機関搭載車の新車販売が原則禁止される方向となっており、ディーゼル乗用車のメッカである欧州からディーゼル車の姿が徐々に消えようとしている。
長きに渡りディーゼルエンジンと過ごしてきた身としては、「カラカラ音」がなんとも愛おしく感じる。