3.5リッタークワッドターボV12は最高出力560馬力
EB110の基本構造体となっているのは、フランスのエアロスパシアル製のカーボンモノコック。ミッドに搭載されるエンジンは、3.5リッターの排気量が設定された60度V型12気筒DOHC5バルブ(吸気側2個、排気側3個)で、これに気筒ごとに独立した12連スロットルとコイルが与えられ、極め付きともいうのだろうIHI製のターボチャージャーが4基組み合わせられている。
標準仕様ともいえるEB110GTでも、その最高出力は560馬力、その高性能版となるEB110SSでは、そのために用意された専用ピストンやカムプロフィールの見直し、インジェクターの大型化、ターボのロールベアリング化などが代表的なメニュー。またターボの過給圧を調節することで、1995年頃からは複数のチューニングもできるようになったようだ。
EB110の駆動方式はフルタイム4WD。そもそもこの開発プロジェクトに参加する予定だったスタンツァーニは、カウンタックで4WD化を考えていたが(そのためにエンジンを後方から搭載し、ミッションが最前方に位置している)、その夢はこのEB110でマテラッツィの手によって叶ったことになる。エンジンとミッションは横に並べて搭載され、したがってエンジンは車体の中心線上からやや左側にオフセットして搭載されている。
順調なスタートを切ったかに見えた、イタリア・カンポガリアーノのブガッティだが、残念ながら経営が順調な日々は長くは続かなかった。1995年に破産宣告を受け、その後はVWによってブランドを継続していることは周知のとおり。
ちなみに破産した時点でブガッティには6台分ほどのシャシーやパーツが残されていたというが、これらはすべてル・マン24時間を制覇したことでもお馴染みの、ヨッヘン・ダウアー率いるチーム・ダウアーが購入。ボディをカーボン製としてさらに軽量化するなど、チューニングを進めて販売を行った。そのカスタマーの中には、ブガッティ時代にオーダーを入れていた、ミハエル・シューマッハの名前もあった。
じつはオレ、後日ダウアーさんのところで、ダウアー版のEB110に試乗したけど、同乗してくれたダウアーさんはアウトバーンで、「まず200km/hまで加速したら、ステアリングから手を放せ、そしてそこからフルブレーキングだ」といきなり言ってきたので、この人、狂ってると思ったわ。でも実際にやってみたら、なんも怖いことなくできたけどね。その時に、EB110ってすげえな、って思ったよ。
ブガッティEB110。それはキワモノでも何でもなく、ブガッティという名門の血を継ぐスーパースポーツにほかならないのである。