他と違うことを「美」とする反骨精神が生んだクセスゴ車
オリビエ・ブーレイさんのように「絶対的なアンチ」を生んだわけでは決してないが、「世の中を騒然とさせたカーデザイナー」といえば、光岡自動車のスーパーカー「オロチ」をデザインした青木孝憲さんも該当するだろう。
「中日新聞」の報道によれば、図工と国語以外の成績は1か2ばかりで、勉強もスポーツも苦手。今でいう陽キャでモテる優等生を憎み、大手自動車メーカーへのカーデザイナーとしての就職も叶わなかった青木さんだが、あるときたまたま光岡自動車の面接を受けることになり(面接官は創業者の光岡 進氏だったらしい)、拾われるような形で同社に入社。
そして入社数年後にやっとデザイナー職についた青木孝憲さんの、こう言っては失礼かもしれないが「裏街道パワー」と「反骨精神」が、あのヤマタノオロチをモチーフとした「オロチ」に結実したかと思うと、非常に感慨深いものがある。
余談ながら先日、久々に公道で見かけたミツオカ オロチは、なかなかカッコよかったですよ。「異質であることの美」を感じました。
そのほかでは、ピニンファリーナを経て「フミア・デザイン」を創立したイタリアの鬼才、エンリコ・フミア氏の一部作品も、世の中を少し騒然とさせたかもしれない。
名作と名高い4代目スバル レガシィ(BP型)前期型のフロントまわりや、なんとも妖艶なアルファロメオ164などをデザインしたフミア氏だが、アルファロメオGTVのヘッドライトあたりのデザインは、3代目ホンダ インテグラ(DC型)の前期型にあまりにも似ている。
両者のヘッドライトの造形が似ているのはパクリ云々ではなく、「両者のデザインには、遠いが、微妙な関係はあったから」ということらしいが、まぁそこはどうでもいい。最初は「変なカタチ!」と思っていたアルファロメオGTVのヘッドライトだが(筆者はGTVの元オーナーです)、あれは慣れると完全にクセになる造形なのだ。
遠い親戚である(?)3代目インテグラ前期型のヘッドライトでも同じ気持ちになったかどうかはわからないが、「さすがは一流デザイナー!」と、あのヘンテコなヘッドライトに慣れ親しんでいくうちに、筆者は日々痛感していたのである。
……と書いていて気づいたのだが、ブーレイ顔の三菱ランサーエボリューションも、傍から見るのではなくオーナーとして接していたならば、接しているうちに「さすがはブーレイさん! 一流デザイナーだなぁ!」と痛感することになったのだろうか?
そのあたりの「もしも」はわからないが、もしもそうなのだとしたら、本稿前半でのオリビエ・ブーレイ氏への暴言ともいえる批判を撤回し、謝罪したい。すんません。