プラットフォームやボディ骨格に変更なしならマイナーチェンジ
モデルチェンジについて、自動運転のレベルのような決まりごとはない。たしかに昔から全面変更をフルチェンジ、一部変更をマイナーチェンジと呼んできたけれど、その後ビッグマイナーチェンジという言葉も出てくると、どこからがビッグなのかなど、けっこうわかりにくい世界になってしまった。
ただ僕は以前、今は旧型になってしまったスバルBRZのマイナーチェンジのデザインについて取材をしたとき、「マイナーチェンジではここまでしか変えることができないので」という言葉を聞いたことがあるので、フルとマイナーの違いはある程度把握しているつもりだ。
具体的には、プラットフォームやキャビンまわりのボディ骨格はそのままで、それらに手をつけずにデザインできる前後バンパーやランプ類、フロントフェンダー、エンジンフードなどを変えるのがマイナーチェンジとのことだった。
日本車については多くがこのフォーマットに則っていると思っている。ただしマツダは、マイナーという表現があまり重要ではないと取られることを嫌って、改良という言葉を使っていると以前説明していた。同社にとってはモデルチェンジ=フルチェンジということになりそうだ。
ただしフルチェンジであっても、プラットフォームやパワートレインを変えないことはある。今年日本で発売したフォルクスワーゲンの新型ゴルフは、フルチェンジではあるがプラットフォームはMQB、パワートレインの形式はEA211 evoで、先代の改良型であることがわかる。
キャビンまわりは変わっていないのにモデルチェンジと称している車種もある。代表的なのはポルシェ911で、水冷エンジンになって以降、996〜997〜991〜992という進化をしているが、このうち996から997、991から992への進化は、横から見たシルエットはほとんど同じだ。
一方プラットフォームは、996から997への進化では不変だったが、その後は1世代ごとに刷新している。ところがパワートレインは、997の途中でPDKと呼ばれるデュアルクラッチ・トランスミッションが導入され、991の途中でエンジンがターボ化されるなど、モデルチェンジとは関係ないタイミングでスイッチしている。
これはクルマに限ったことではないけれど、昔から新型やモデルチェンジという言葉は、買い替えを促す絶好のセールストークであり続けてきた。でも911の例を見ればわかるように、進化の度合いは大小さまざまだ。
結局のところ、大事なのは僕たちユーザーのモノを見る目だと思う。モデルチェンジのたびに買い換えて、それで満足する人もいるだろうが、新旧の内容をしっかり比べて、できれば乗ったうえで買うかどうかを決めるほうが、その後の満足感は絶対に高くなると信じている。