日産の名車「シルビア」の凄さを振り返る (2/2ページ)

S13からFRスポーツの黄金期を迎える

5)5代目シルビア(S13)

 1988年に登場した「S13」の愛称で親しまれている5代目シルビアは歴代シルビアのなかでもっとも生産台数が多いのと同時に「デートカー」としての立ち位置も確固たるものにしたシリーズ屈指の名車だ。

 先代のS12の硬派なデザインとは一転して、未来的でスタイリッシュな造形であることや、希少な存在だったFRクーペであるとこ、足まわりには新開発のマルチリンクサスペンションを採用するなど、デザイン面でも性能面でライバルたちと比較しても頭ひとつ抜けていたモデルだ。ちなみにS13シルビアは、グッドデザイン賞を受賞しており、総販売台数も30万台ほどを記録している。

 ライバルはホンダのプレリュードとされていたが、ボンネットやルーフの低い、FF用のプラットフォームを持ち合わせていなかったことを理由にFRとなったと言われている。しかし、それが功をなしてか、「デートカー」というプレミアム性以外にも、手頃な価格のFRマシンということもあって、モータースポーツファンにも愛された一面を持つ。

 エンジンは当初、1.8リッターのCA18型のNAモデルとターボモデルを展開していたが、1991年のマイナーチェンジによって、日産の名機として長年愛された2リッターのSR20型エンジンを設定。NAとターボが用意されたが、ターボモデルはチューニングパーツが多く用意されていた。このSR20DETエンジンは、現在においても絶大な人気誇る名機中の名機となっている。

 また、このS13シルビアはオーテックジャパンよりコンバーチブルモデルも販売されていた。姉妹車には、リトラクタブルヘッドライトを備える「180SX」がある。

 大きなレースには参戦していないが、プライベーターなどがチューニングした車両でワンメイクレースでN2仕様として出走していた。

4)6代目シルビア(S14)

 大ヒットしたS13シルビアの後釜として、S14シルビアが1993年に登場。大きなトピックとしては、シリーズ初の3ナンバー化により、居住空間の向上が見受けられたほか、デザインも若干大人しくなった。しかし、これが市場では受け入れられずに販売に苦戦。先代のS13の中古車の方が人気が出るという事態にまでなってしまった。

 エンジンは先代と同じくSR20型を採用し、NAとターボモデルを設定。ターボモデルでは20馬力アップの220馬力という出力を発揮した。

 1996年にはマイナーチェンジを行い、後期型となった。このモデルではヘッドライトが鋭いツリ目形状となるなど、フロントのデザインを一新。リヤのテールランプもデザインが変更された。中古市場でも後期の方が人気傾向だ。

 なお、S14にはオーテックが手掛けた専用装備満載のコンプリートカー「オーテックバージョンK’s MF-T」や、ニスモのコンプリートカー「ニスモ270R」がある。

 S14シルビアの販売台数は約8万5000台と、先代に比べると奮わない結果となった。モータスポーツには全日本GT選手権のGT300クラスに参戦していた。

7)7代目シルビア(S15)

 長きにわたって日産を支えたシルビアも、この1999年に登場したS15シルビアで最後となる。このモデルから、S13、S14で使われていた「J’s」「Q’s」「K’s」というグレード名を廃止し、ターボモデルと「SpecR」NAモデルを「SpecS」とした。

 なお、S15の登場をきっかけに、180SXの販売は終了し、左ハンドルモデルも開発されなかったので一部の地域を除いて、海外にも輸出されなかった。エンジンはS13後期から続くSR20型を継承。ターボモデルは最大で250馬力を発生させた。

 また、ボディサイズは5ナンバーへと戻されたのも特徴だ。ターボモデルにはAピラーに純正でブーストメーターを採用し、NAモデルでは油圧計が採用されるなど、よりスポーツ色の強いモデルとなっていた。SpecRにはシリーズ初の6速MTも導入された。

 このモデルでもオーテックバージョンが存在し、SpecSをベースに専用パーツなどを用いて200馬力を発揮するマシンへとなっている。なお、オープンモデルのヴァリエッタもラインアップしていた。

 排ガス規制により2002年8月にR 34GT-Rと並んで生産終了となり、シルビアシリーズは幕を閉じた。S15の販売台数は約3万8000台。販売期間は3年11ヶ月と歴代でもっとも短い。レースシーンでのS15は、全日本GT選手権のGT300クラスにおいてダイシン・シルビアがドライバーズタイトルを獲得してる。こちらもモータースポーツファンに未だに愛されており、現在でも根強い人気があるのが特徴だ。

シルビアは本当に終わってしまったのか? 今後を大予想!

そもそもデートカーと言われた理由は?

 シルビアといえば当時はデートカーとして扱われることが多かったが、取り回しのいいFRスポーツという面も持っており、今でも多くの人に親しまれている。では、なぜ当時は「デートカー」だったのか。それは第一にルックスの影響だろう。「アート・フォース・シルビア」と呼ばれたように、その流麗なボディラインはライバル不在とまで言われた外見だった。

 元祖デートカーとも言われるホンダ・プレリュードが唯一のライバルであったが、未来的なデザインと、低く構えたそのエクステリアは男性のみならず女性にも大好評。シルビアで乗りつけるだけでデートが盛り上がったのだ。また、インテリアも曲面が美しいダッシュボードや座り心地の良いハイバックシートなど、居住性も見事だった。もちろん、ドライブデートにも耐えうる見事な乗り心地も文句なしだった。

 また、ハイパワーな直4ターボエンジン+FRというパッケージングも若者をはじめ多くのファンを獲得する要因にもなった。ターボエンジンなので、パワーアップも容易でありながら車両価格も安く、当時盛り上がりを見せていたドリフト走行などにもまさにピッタリのマシンだったのだ。

 プロドライバーも購入したり、ビデオなどでもチューニングカーが大暴れしていたことも人気の理由のひとつだろう。プレリュードも走りが楽しめるモデルではあったが、方向性の違いなどもあったほか、FFでスポーツという文化も当時はほぼなかったので、シルビアほどの盛り上がりは見られなかった。その人気っぷりは30年近く経った今でも健在で、ドリフトシーンからレースシーンまでまだまだ活躍しており、新作パーツも登場することがあるくらいなのだ。

では、復活はありえるのか?

 トヨタ86やスバルBRZ、マツダのロードスターなど、探せばFRスポーツというのはあることにはあるが、ほぼ絶滅危惧種だろう。日産にもフェアレディZがあり、新型の登場も目前とされているが、シルビアのようにコンパクトFRスポーツではない。復活を望む声も根強く、雑誌などでも「次期シルビア!」といった予想がされていることもしばしばあるが、現状では何も音沙汰はない。強いて言うなれば、2013年に東京モーターショーで発表されたコンセプトモデル「IDx」が初代シルビアや510ブルーバードに似ており、さらにFRということから次期シルビアの候補ではあったが、残念ながら市販化される予定は現在までない。

 そもそも、日産にはフェアレディZやスカイラインよりも小さいFRマシンを製造するプラットフォームを現状持ち合わせていないため、技術的には可能でも、製造には莫大な初期投資が必要ということもあり、おいそれと製造できないのである。トヨタが86をスバルと共同で開発していることからも、シルビアの復活にはそういった他社との協力も必要な鍵かもしれない。強いていうならルノーと共同開発という候補があるが……。

どうしてもシルビアに乗りたい! ではどうしたらいいのか?

 現在、日本のみならず世界中で日本のスポーツカーが大人気なのは周知の事実だろうが、シルビアもその例に漏れない。

 海外では240SXなどという名前で販売されていた過去があるので、海外人気はそうでもないように思われるが、海外ユーザーは「JDM」と呼ばれる仕様を再現すべく、右ハンドルにこだわりがあるのだ。また、国内では30万台も売れたS13も、2000年代初頭では年式が故にタダ同然で取引されていたため、競技ベースやドリフトベースで物凄い台数が使用されて玉数は急激に減少。もともと人気のあまりなかったS14シルビアも、ある程度パーツの流用が利くことなどから、S13から移行するユーザーが目立ち、同じく玉数は減少。S15はシリーズ中もっとも高年式ということ、5ナンバーサイズであることや、格好いいスタイリングなどからもっとも人気があるので、こちらも玉数が少ない。

 人気が再燃し始めた2010年頃を境に、ドリフトやサーキットユースで酷使されすぎたが故の玉数の減少によって中古相場は上昇の一途を辿っている。価格は、条件を絞らずに「シルビア」と検索して出てくる物で最安物件が12万km走行で修復歴ありの「S14 Q’s」でコミコミ100万円。ここからがスタートとなる。なお、7、8年前までは30万円〜50万円程度で購入できた。その他モデルの最安物件は「S13 Q’s」で130万円、「S15 SpecS」で114万円となっている。

 S13〜15のMTのターボモデルは、S14であれば150万円前後から購入できるが、S15になると200万円あたりがスタートラインとなっており、条件を絞れば絞るほど高額になる。安心して楽しめる物件は200万円台後半からだろう。なお、平均中古車相場は242万円(8月1日現在)だ。

 現在、シルビアに代わるような車種は日産には残念ながらないが、手頃なデートカーとして使うのであれば、今夏販売予定のノートオーラやキックスオーテックが内外装や走りの質感の高さから、候補に挙がるだろう。予算は上がるが、スポーツ性とデートカーの両方の要素を取り入れたクルマを選ぶのであれば、フェアレディZやスカイラインが候補にあがると思われる。

 とくにスカイライン400Rは走行性能の高さと車内の質感、洗練されたエクステリアデザインなどを考えるとオススメの1台だ。フェアレディZは新型が出るので、それを待つのが得策と思われるが、おそらく現状のままの2シーターとなるので、それがネックだろう。

■まとめ

 日産のスポーツカーの歴史を7世代に渡って支えたシルビアも、S15販売終了から19年経ったネオクラシックに片足を突っ込んでいるクルマだが、まだまだ色褪せない魅力を持っている。中古車価格が今以上に大きく下がることが予想できないので、手が届かなくなる前に、購入するのをオススメしたい。そして、日産からはぜひ、86&BRZなどに対抗できる魅力的なスポーツモデルの復活も熱望したいと思う。


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