FF世界一決定戦のホンダのライバルといえばR.S.
対するルノーには、ルノースポールがあった。ルノーは1898年の創業直後から積極的にモータースポーツに参加してきたブランドで、第2次大戦後もパートナー的存在だったゴルディーニやアルピーヌを通じて活躍を収めてきた。
そして1969年にはル・マンでクラス3連覇を収めF1にも参戦してきたゴルディーニを、1973年には世界ラリー選手権を席巻してル・マンでも輝かしい戦績を収めてきたアルピーヌを傘下に収め、ふたつのモータースポーツ・ブランドで競技車両や高性能プロダクションモデルの開発を行った。
さらに1976年にルノースポールを設立してゴルディーニを経営統合すると、ルノーのWRCをはじめとしたラリー用のマシンやワンメイクレース用マシンなどの開発を行った。
一方のアルピーヌは傘下に収まった後もスポーツカー・メーカーとして表舞台で活動を続けたが、1995年に事実上のブランド休止。多くの技術者達はルノースポールのメンバーとなり、活動を支えていくことになった。
ルノースポールはその後もJWRCやERCなどのラリーで優れた戦績を残しつつカスタマー向けのラリー・マシンの開発などを行ってきているが、1996年に最初にして最後のブランドの名を冠したロードカー、ルノースポール・スピダーを発売。
以降はモータースポーツで培った技術を市販車に投入し、エンジンやサスペンションはじめあらゆる部分にチューンナップを加えたスポーツ・モデル、R.S.(ルノースポール)ヴァージョンを開発。メガーヌやクリオ(日本名:ルーテシア)に設定された“R.S.”は、クラスを軽く越えた速さと抜群のハンドリング性能で世界中のクルマ好き達を唸らせてきた。
そして2016年、アルピーヌがブランドとして正式に復活し、翌年に新型A110を発表。
ルノースポールはマシン開発も含めたF1での活動とカスタマー向けラリー・マシンの開発、市販R.S.モデルの開発などを行い、アルピーヌはル・マンをはじめとする耐久レースとスポーツカーの販売を担うことになった。が、この2021年、ルノーはF1での活動や市販高性能モデルの展開などスポーツ色の強いものは全てアルピーヌの名の元に行うことを決定。ルノースポールの名前は消滅し、アルピーヌ・ブランドに統合されることになった。