斬新なアイディアでボディ剛性を高めた2台
2)三菱 デリカD:5
クルマの骨格構造をデザイン性に昇華させた好例が、2007年に発売され、2019年にビッグマイナーチェンジを行い、商品力、走り、安全装備などで画期的な進化を見せた三菱デリカD:5だ。
注目のポイントは、三菱の航空機機体構造からヒントを得たという、A/B/Cピラーに閉断面をグルリと回し、肋骨のように見える4つの環状骨格構造「リブボーンフレーム」の採用だ。ボディ剛性、耐久性の向上はもちろん、高い安全性を確保。その技術もあって、2007年度の自動車アセスメント衝突安全性能試験総合評価は最高の6スター(★★★★★★)を獲得しているのだから頼もしい。
が、「リブボーンフレーム」は目に見える安全性、安心感をもたらしているところに素晴らしさがある。そう、車内の天井に、あえて「リブボーンフレーム」を意識させるようなベルトデザインをあしらっているのである。1列目席では意識のしようもないが、2/3列目席では前方視界に入り、基本的な安全性能、走破性の高さとともに、そこはかとない安心感、頼もしさが視覚的にも得られるのである。
フィット4のAピラー、デリカD:5の「リブボーンフレーム」は、目に見える装備以外で安全性を高めたアイテムと言えるが、まったくユーザーの目に入らない、しかし画期的なボディの剛性、耐久性、そして衝突安全性をまでもを高めた技術が、フォルクスワーゲンが1990年代から導入したレーザー溶接技術である。
3)フォルクスワーゲン ゴルフ7
ゴルフに代表されるフォルクスワーゲンのクルマに乗ると、走り始めた瞬間から、世界トップレベルのボディの高強度、高剛性、そしてしなやかな強靭さを実感できるのだが、その根源となるのが、ボディの軽量化と強度を両立させるべく、フォルクスワーゲンが国家予算並みの投資で実現した、スポット溶接の「点」ではなくレーザー光によって「線」で溶接するレーザー溶接ラインだったのだ。
ゴルフ7では「ウォブル・ウェルド」と呼ばれる、ゆらめく=溶接面を拡大できる新溶接技術も投入。さらにフォルクスワーゲンのスチールボディには、以前から構造用接着剤も多用され、「面」での結合によって、走行性能はもちろん、さらなる衝突安全性にも直結するボディの高剛性化を実現しているのだ。
すごいのは、レーザー溶接や構造用接着剤は目に見えなくても、走り始めれば、その威力、恩恵が、ダイレクトに感じられること。それが、日本の自動車メーカーの技術者も羨む、安心感に満ちた運転感覚、乗車感覚の源でもあると言っていい。
話題はそれるが、ゴルフが世界のコンパクトカー、Cセグメントのベンチマークである続けているのは、そうした巨額の投資による生産ライン、レーザー溶接技術によるところも大きいと考えられる。