欧州車はOKでもアメ車はNGの不思議! 日本で乗りやすい「右ハンドル」のアメ車が「好まれない」ワケ (2/2ページ)

アメリカ車ファンはアメリカ仕様のクルマを欲しがる傾向が強い

 アメリカンブランドについては、いまや日本国内で正規輸入販売されているブランドは、キャデラック、シボレー、ジープ、そしてテスラぐらい。ジープやテスラは右ハンドルモデルをラインアップするが、GMではキャデラック車は左ハンドルのみとなっている。

 過去には、「全長を詰めて右ハンドルにして、さらにウインカーレバーを進行方向右側にすれば売れる」とのことで、キャデラックで全長を短くし、右ハンドル、そしてウインカー位置まで変えたのだが、期待するほど売れなかったということがあった。

 これが、輸入車販売シェアが少ない日本市場においても、そのなかで販売台数の多いドイツ車では、右ハンドル仕様など、日本市場への対応は重要となるが、アメリカ車は残念ながらドイツ車ほどの販売シェアはもっておらず、もっぱらアメリカ車ファンがメインユーザーとなっていた。

 そして、アメリカ車に強いこだわりを持つがゆえに、右ハンドル化や全長の縮小などはネガティブに働いてしまうことが多く、「アメリカ仕様とあまりに違う」となるのである。

 ネガティブに働くのならまだしも、正規輸入モデルに愛想をつかして個人で輸入したり、アメリカ本国仕様の輸入販売をしている業者から購入したりしてしまうコアなアメリカ車ファンが目立つというのも、アメリカ車ならではの傾向だ。

 過去には、車検時の検査だけすり抜けるために、黄色いウインカーをテープ止めして検査を通し、通った後には外して、アメリカ仕様と同じ赤いウインカー(日本では違反)のまま日本国内で乗る人も多かった。

 時おり、「日本にもアメリカンピックアップトラックの正規輸入を」という話が出てくるが、そもそも1ナンバーになってしまうなどハードルは高い。正規輸入するからには部品の国内ストックなどの手間やコストもかかる。

 仮に正規輸入するとなっても、ピックアップトラックの場合、できるだけ国内で使いやすいようにとダブルキャブ+ショートベッド(荷台が短い)の仕様になる。アメリカ車ファンの中にはトラックはシングルキャブと考えている人も多く、そんなアメリカ車ファンを落胆させてしまうことにもなるだろう。

 そんな人たちは、自ら輸入したり業者を通してアメリカ仕様を購入したりしてしまうので、わざわざ正規輸入する必要はないとの話も聞いたことがある。

 新型コルベットでは、すでに右ハンドルの正規輸入モデルの初期ロットは完売しているとのこと(その多くはアメリカ車販売の専門業者との話もある)だ。ただ、旧来からのアメリカ車ファンは、アメリカから左ハンドルモデルを個人輸入したり、輸入販売している業者から購入したりしているとの話も聞く。

 アメリカ車ファンは本国仕様の左ハンドルを好んで乗り、右ハンドルの正規輸入モデルは、アメリカ車うんぬんではなく、新型コルベットに興味のある、いわば新規顧客を取り込むのには有効なのかもしれない。GMは日本市場で積極的な拡販を狙っているわけではないが、アメリカ車ファン以外の反応というものを見たいのかもしれない。

 世界市場を見渡しても、これだけ自国ブランドと輸入外資ブランドの世界がはっきりわかれているマーケットは珍しい。右ハンドルにして、日本市場でより使いやすくしてあればそれでいいというわけでもないところは、なかなか手ごわいマーケットといえるが、日本で上手く立ち回れれば、世界マーケットでの販売にも相当自信がつくといわれていることには妙に納得させられてしまう。

 韓国ブランド乗用車の再上陸や、中長期的には中華系ブランドの上陸も考えられるが、どのような形で日本市場において展開していけばいいのかは悩ましいところのようである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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