この記事をまとめると
■かつてのクルマはニックネームで呼ばれるモデルが多かった
■クルマの白物家電化によりニックネームのあるクルマは減少した
■ニックネームには時代背景を表しているようなものもあって面白い
動物やら地名やら、呼びやすければなんでもよし!
その昔はクジラ(4代目トヨタ クラウン)やダルマ(初代トヨタ セリカ)、あるいは水中メガネ(初代ホンダ Z)等々、クルマに「ニックネーム」が付くことも少なくなかった。
しかしいつの頃からか「クルマのニックネーム」は減少し、今ではほぼ絶滅したようにも思える。
いやもちろんカーマニアは「VAB」だの「1JZ-GTE」だのと、クルマのこともエンジンのことも型式で呼んだりはしている。だが、全国民とまではいかずとも「日本国民の4分の1ぐらいには通じるクルマのニックネーム」は、ほぼ絶滅してしまったのだ。
ニックネームが絶滅した理由は「クルマの白物家電化」とも密接な関係があるはずだが、そのあたりの総合的な分析はマジメな人に任せ、私は(ヒマなので)古き良き「クルマにニックネームがあった時代」のことを振り返り、ひとりでしみじみしたいと思う。
1)小ベンツ(本名:メルセデス・ベンツ 190クラス/W201)
1982年に発表され、日本では1985年から1993年まで販売されたW201ことメルセデス・ベンツ 190クラス。それは、当時のSクラス「W126」の品質をほぼそのまま、小さなボディに詰め込んだという偉大なコンパクトセダンだった。
しかし、バブルに浮かれた当時の日本人は、まだまだ「大きいことはいいことだ!」と、昭和43年の森永エールチョコレートのCMのような感性を持っていたからだろうか、偉大なコンパクトセダンはただただ「小ベンツ」と蔑まれた。
そして190Eで迎えに行くと、青山学院大学文学部仏文科の女子学生は「なんだ、ベンツっていうから楽しみにしてたのに小ベンツかぁ……。せめて2597ccのM103型直6SOHCを搭載したW124の260Eだったら良かったのに」と、あからさまにがっかりしていたものだ――というのは完全に嘘だが、まぁ190Eが女子大生にすらナメられていたのは事実である。
しかし昨今は「大きいことはいいことだ」の時代も終わり、メルセデス・ベンツ190Eも一部で大いに再評価されているように見える。良きことである。