電装品の製造の遅れも新車販売に影響を及ぼしている
ところで、半導体がなければ自動車は生産できないというが、果たして1台あたりどのくらいの半導体が使われているのだろうか。半導体のひとつひとつを数えることは難しいが、およそ1000個の半導体が使われているという。それはクルマのパーツのほとんどが電子化されたことが理由だ。
1970年代にはエンジンの燃料を送るのはキャブレターの役割であり、点火はコイルとデスビが担っていた。しかし、今ではエンジンの燃料供給・点火時期コントロールはすべてコンピュータが行っている。さらに昔はメーターも機械式で、ワイヤーによって針が動くという仕組みだったが、いつしかステッピングモーターを使う指針式となり、いまでは液晶ディスプレイによりメーター情報を表示するようになっている。こうした進化により自動車が使う半導体の数はうなぎ登りに増えている。
とくに、自動車が使う半導体については自動運転領域を除くと、最新型ではないレガシーなタイプが多いことが特徴だ。そのため、半導体としては低価格帯なことが多く、半導体メーカー側としても投資のインセンティブが湧かないという背景がある。それも半導体不足の状況につながっているといえる。
そんな半導体不足は、自動車の生産以外の部分でも影響を与えている。わかりやすいところでいうとカーナビやドラレコ、ETCといった半導体を使っている電装品の供給量も減っている。新車販売時には、こうした電装品も装着した状態で納車するわけだが、それらの供給量が不足しているために、販売店ではカーナビやETCが入手できないために納車が遅れるという事態につながっている。
国内での自動車販売が、需要の高まりに反して伸びきれていないのには、カーナビなど電装品の不足という問題もあるのだ。
こうした半導体不足に苦労する新車販売ビジネスの停滞に対して、伸びているのが中古車市場だ。新車や電装品の生産が遅れているのであれば、すべてが揃っている高年式の中古車を買えばいいとユーザーの多くが考えたことにより、中古車の販売数は増えているし、相場は上昇している。風が吹けば桶屋が儲かるではないが、半導体不足は中古車市場の活況を生んでいるのであった。