EDRには映像や音声は記録されていない
イベント・データ・レコーダーという言葉の響きから、いわゆるドライブレコーダーを想像するかもしれませんが、機能としてはまったく異なるものです。
ドライブレコーダーが、カメラとマイクによりコクピット内や車両の前方および後方の音声や映像を記録するのに対して、EDRはアクセルやブレーキ操作、シフトポジションやエンジン回転数といった機械的なデータを記録するものとなっています。
たとえるならば、航空機におけるフライトデータレコーダーに当たるのがEDRで、コクピットボイスレコーダーに当たるのがドライブレコーダーといえます。その意味では、どちらか一方があれば十分というものではなく、事故原因を解明するのであればEDRもドライブレコーダーも重要といえます。
では、EDRはどのような情報を記録するのでしょうか。たとえば、スズキの取扱説明書によると以下のようなデータが記録されると公表されています。
●エンジンの回転数など、エンジンの状態
●ギヤポジションなど、変速機の状態
●アクセル、ブレーキ、シフトポジションなど、操作の状態
●各種コンピュータシステムの故障に関する情報
●SRSエアバッグ作動に関する情報 ※スズキ・スペーシア(2020年8月〜)オンラインオーナーズマニュアルより
つまりドライバーの操作と車両の状態を別々に記録しています。
より細かくいえば、アクセル開度とスロットル開度、インジェクター噴射率、エンジン(モーター)回転数を別々に記録していますから、エンジン回転が上がって暴走した場合にもどこにトラブルの原因があったのか探ることができるのです。
たとえば、暴走事故の原因を解明する場合に、アクセル開度センサーのデータでは全閉なのに、エンジン回転数が上がっているのであれば、機械側の故障による暴走事故の可能性が高まりますし、逆にアクセル開度のデータが全開でエンジン回転数も上がっているようであればドライバーの操作が原因の暴走の可能性が高いと考えられるといった具合です。
コンピュータシステムの故障なども記録されますから、ADAS機能の故障による事故などもEDRを解析することで判明するようになっています。これから自動運転機能が拡大していくことを考えると、このタイミングでの義務化というのは非常に納得がいくものです。
また、ヨーレートセンサーやGセンサーのデータも記録されるので、衝突時の衝撃なども計算することが可能となっています。
なお、基本的には音声や映像はEDRでは記録しません。ですからプライバシーは守られます。ただし、最新のEDRではADAS機能のセンサーとして使っているカメラの映像を記録する機能を持っていることもあります(例:BMW)。
音声コントロールを持つクルマであれば車内マイクを備えていますから、プライバシー侵害の問題がクリアできれば、将来的には音声も記録できるようになるかもしれません。