狭い層に確実に刺さる尖ったモデルを導入するピンポイント戦略
日本の街中でよく見かける輸入車といえば、メルセデスベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、アウディなど、ドイツを主体とする欧州車がメインである。
一方で、アメリカ車となると、滅多にお目にかかれない。「日本でアメリカ車の販売台数が極めて少ないのは、日本に非関税障壁が存在するからだ」。こうした言い回しは、ドナルド・トランプ前アメリカ大統領だけではなく、過去にもアメリカ政府機関などが主張してきたが……。
そうした中、日本でよく見かけるアメリカ車といえば、最近はテスラの存在が目立つ。とはいえ、テスラが販売するモデルS、モデルX、そしてモデル3に対して、いわゆる”アメ車”というイメージを持っている日本人はけっして多くないと思う。
また、テスラほどではないが、たまに見かけるのがキャデラックだ。キャデラックは、ゼネラルモーターズ(GM)・ジャパンによって正規輸入されており、全国各地に販売代理店があるからだろう。
ちなみにGMジャパンではシボレーも扱っているが、こちらはコルベットとカマロというスポーツカーに特化している。コルベットとカマロのオーナーを対象とした走行会を開催したり、ミッドシップ化された新型コルベット成約者限定で富士スピードウェイを疾走する右ハンドル仕様車の走行シーンをオンラインで配信したり、日本ユーザー向けに積極的なアプローチをしている。
GMといえば、キャデラック、シボレーのほか、アメリカ本国ではGMCやビュイックといったブランドも取り扱っているが、GMジャパンはアメリカンプレミアムSUVとアメリカンスポーツカーに対する確実な需要を日本国内で掴んでおり、この層に対するピンポイントでの事業戦略をアメリカ本社と連携して行っているのだ。
こうしたピンポイント戦略は、ステランティスでも同様だ。ステランティスはFCA(フィアット クライスラー オートモービルズ)とPSA (プジョーシトロエン)が2020年12月に合併して誕生した新会社だ。そのうち、アメリカ車については、クライスラー、ダッジ、ジープ、ラムの4ブランドがあるが、日本ではジープに特化する形で事業戦略を組んでいる。
また、本国ではディビジョン別販売台数でトヨタとトップ争いをしているフォードについては、GMやステランティスのようなピンポイント戦略をとっていない。かつてはフォードジャパンがマスタングやフォーカス、エクスプローラーを販売していたが、2016年に日本から完全に撤退して以降、いまのところ日本市場への復帰についての情報もない。
じつはアメリカでは今、新型フォード・ブロンコが大人気で、オフローダーとして確固たるブランドを確立しているジープの牙城を崩しそうなほどの勢いがある。
日本でもぜひ、ピンポイント戦略を取り入れて、フォード本社直結の企業による新型フォード・ブロンコの正規輸入実現を期待したいところだ。