走り出すこともできないレベルから特訓の日々が始まる
「WEB CARTOP編集部でeモータースポーツの大会に参戦しようと思う」。
ほう……。編集長の口からそれを聞いた時、私はもちろん“応援する側”の人間だろうと思った。
しかし、よくよく聞けば、予選ラウンドは全部で4回あるため、編集部員はひとり1回出ればちょうどいい!(WEB CARTOP編集部員は4名)などと言っている。
いやいやいや、絶対無理! eモータースポーツなんぞやったことないし、そもそもeモータースポーツって何? それに私は自分のミスで人に迷惑をかけてしまうといったプレッシャーから、団体戦が苦手だ。
それが理由で学生時代は個人種目の陸上部に入部したし(人数不足で時折リレーに出場させられたが)、以前CARトップ(本誌)編集部の先輩たちとチームを組んで出たクルマとカヌーで競う「リバーレイド」ではカヌーを担当して転覆。足を引っ張ったどころかカヌーを大破した。おなじくCARトップ編集部の先輩たちと出場した「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース 前哨戦」(ラジコンの大会)では、コソ練して行ったにもかかわらず、まともに周回できず、“暴走ロードスターCARTOP号”と化した。
話は逸れたが、そんな私がまったく未経験のeモータースポーツの大会に出場。先が思いやられる……。
しかもすでにWEB CARTOP RACINGなるチーム名がついているし、会社には立派な筐体が鎮座している。これはガチのやつだ……。
とはいえ、メディアらしく、eモータースポーツの楽しさを広めようといったコンセプトのようなので、当日までできる限りの準備をしながら楽しもうと(半ば無理やり)ポジティブな思考に転換。Yeah!
しかし……テンションだけ上げてもどうにもならないのが世の常。何しろ言い出しっぺの編集長からして、「ゲームはにゃんこ大戦争しかやらない派」と、よくわからない派閥の所属であることを宣言している。何のことはない、eモータースポーツ未経験なのだ。その他編集部員もほぼ素人。
と、途方に暮れる私だったが、WEB CARTOP RACINGには、ドラフトによって認定ドライバー(要はめちゃくちゃ上手くて速いドライバー)の兒島弘訓選手と大田夏輝選手が我がチームに来てくれることになったと聞かされた。少し安心! 心強い限りだ。
それならまずは筐体なるものに座り、走ってみようじゃないか!
ということで、兒島さんに会社に来てもらい、指導を受けることに(この日から師匠として崇めている)。
参加する大会は「JeGT GRAND PRIX」。グランツーリスモスポーツを使用し、車両はGr.3というのが決まりだ。車種は兒島さんが無限に勤めていることから、ホンダNSXを選択した。
この時点でRd.3のサーキットはまだ正式に決まっていなかったので、決まるまでは鈴鹿で練習することに。
一通りの基本操作を教えてもらい、走り出してみると……いや、走り出せない。なんだこの感覚は! すぐにスピンしてしまい、復帰もできないという地獄に陥る。
児島さんにラインやブレーキポイント、どこで何速に入れるかなどを教わりながら走り、何とか動かせるようになってきた。しかし、思うように走れず、コースすらなかなか覚えられず、この先は長い道のりになることを悟った。
それからは兒島さん、大田さんが走行する動画をもらい、それを見ながらひたすら練習。仕事を終えては終電近くまで走り、練習で使っていた愛用のレーシンググローブはボロボロに。日頃の運動不足がたたり、肩こりと腰痛がひどいと話すと、大田さんからは「それ、本当に鈴鹿行ってるんじゃないですか!?」というツッコミを頂戴する始末だ。
2020年12月の初めから特訓すること1カ月弱。鈴鹿を2分4秒で走れるようになったところで、Rd.3本番のコースが決定した。それは忘れもしないクリスマスの日のこと。
聞いたことのないサーキットに嫌な予感がしたが、その予感は的中。連絡を受けた時、とある試乗会で一緒にいたレーシングドライバーの中谷明彦さんに聞いてみると、「あのコースは難しいよ〜! 実車で走ったことあるけど」とのこと。説得力がありすぎる。
試乗会から会社に戻り、走ってみると、もはやサーキットというよりは峠なのではないかと思うようなコースに絶句。
乾、振り出しに戻る。
この時点で本番まで1カ月強。落ち込んでいるヒマはない。再び兒島さん、大田さんから走行動画をもらって練習。その後、コロナの状況は深刻さを増していたが、グランツーリスモは通信ができるため、認定ドライバーのおふたりや中谷さんにリモートでご指導いただいた。
その甲斐あって、ド素人の私がなんとか2分8秒で走れるように。Rd.3の前日に行われた女性限定のレース、「レディースカップ」のコースがマウントパノラマだったため、練習も兼ねて参加。こちらも波乱の展開ではあったが(動画記事参照)、レースの雰囲気がわかり、とても良い経験になった。
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