軽自動車で培ったノウハウで徹底したコストダウン実施
新車価格が上がっているなかで、スズキは庶民の味方なのだ。では、スズキはなぜコスパに優れたクルマを生み出すことができるのか。
クルマというのは部品点数3万点からなる工業製品であるから、コストダウンにはいくつもアプローチがある。部品点数を減らすことも重要だし、部品価格を下げること、生産工程での無駄を減らすことなどがポイントになる。
いずれも設計時に織り込んでおく必要があるファクターであり、そのあたりのノウハウについて軽自動車を長く作ってきたスズキには一日の長がある、というのが自動車業界で言われているところだ。そのコストダウン設計の巧さにはトヨタも一目を置くという。
さらに、人件費も商品価格には影響する。有価証券報告書などで確認すると、スズキの平均年収は約690万円。トヨタの平均年収は約865万円だから、一台当たりに乗せるべき人件費負担がそれなりに異なってくることはわかるだろう。
スイフトスポーツのデキの良さを知ってしまえば、もっと給料をあげてもいいのにと思うかもしれないが、この人件費がリーズナブルなクルマにつながっているのも、ひとつの事実だ。
とはいえ、かつてのスズキには「安かろう悪かろう」という面もあった。筆者は個人的に3台(うち2台は軽自動車)ほどスズキの四輪車を所有したことがあるが、耐久性には疑問を覚える部分もあった。
具体的には、ナンバー灯が破裂するようにして切れるという見たことも聞いたこともないような壊れ方をしたことがある。ブレーキランプが接触不良によって点灯しなくなるというスズキ車にはお馴染みのトラブルに見舞われたのは一度や二度ではない。
また、ホイールベアリングにガタが発生するのが早く、耐久性においても値段なりという印象があった。他社であればオーバークオリティに設計する部分が、必要十分な品質に留められているといったイメージだろうか。
さすがに最近ではブレーキランプもLEDが増えてきているので、そうしたトラブルを見かける機会も減ってきているが、ディテールにフォーカスすると、まだまだ安いなりの理由があると感じる部分もあるのも正直な印象だ。
そうした点を理解して、定期交換やアップグレードにきちんとコストをかけられるのであれば、優れたパフォーマンスをずっと維持していくことができるのも、またスズキ車の良さといえる。