2021年6月末近くの某日現在、R34型日産 スカイラインGT-R Vスペック II Nürの中古車価格は、カーセンサーnetによれば3500万円ほどであった。今さら説明するまでもないとは思うがVスペック II Nürとは、R34型スカイラインGT-Rの生産終了を記念して2002年1月に発表された限定車である。
そして前述日現在、スバル インプレッサ 22B STiバージョンは「3300万円」にて同サイトに掲載されていた。これまた有名なモデルゆえ詳しく説明する必要はないと思われるが、世界ラリー選手権のWRカーカテゴリー3連覇を達成した「Impreza World Rally Car 97」のイメージを再現した、1998年に400台のみ発売された限定車だ。
2021年6月末現在、3500万円ほどの価格が付いている日産 スカイラインGT-R Vスペック II Nürを例に話を進めよう。
GT-R Vスペック II Nürの「使用価値」は、当然ながら3500万円分も、つまり一般的な乗用自動車(300万円前後)の10倍以上もあるわけではない。
日産スカイライン GT-R Vスペック II Nürのエンジンやウォーターポンプ、エキゾーストマニホールドなどはすべてN1仕様となり、さらにはエンジンのバランス取りも行われている。しかし、だからといって一般的な乗用車の――性能的にも法規の面でも――10倍以上の速度で目的地まで行けるわけではない。また10倍以上の人員や荷物を運搬できるわけでもないのだ。
だが「交換価値」という価値においては、日産スカイライン GT-R Vスペック II Nürのそれはけっこう絶大なものとなる。
身も蓋もない話としては、それは「大金」に交換することができる。仮に3500万円で買ったVスペック II Nürは数年後、「4000万円」ぐらいの日本円に交換できる可能性も十分あるだろう。
またGT-R Vスペック II Nürは、きわめてハイパフォーマンスであるがゆえに「運転中の猛烈な快感」というものに交換できる価値を有している。またきわめて希少ゆえに「希少性効果(scarcity effect)」にも交換されることになる。
希少性効果というのは要するに、入手困難なモノに対しては、我々人間はほぼ自動的にその価値を高く見積もったり、それを手に入れること自体に価値を見いだすという習性である。子どもが、大多数の子どもは入手できない超レアな「なんとかカード」を手に入れる喜びおよび価値と、クルマ好きの成人がR34型日産スカイラインGT-R Vスペック II Nürを手に入れることの喜びおよび価値は、言ってはなんだがほぼ同質なのだ。