ついに登場アプライドD! その進化をマリオ高野が解説
2018年夏のデビューから早3年。現行型の5代目フォレスター(SK型)がビッグマイナーチェンジを受けた。アプライドD型と呼ばれる最新型の最大の特徴は、イメージチェンジをはかったフロントマスクで、WEB上での評判を見ると、デザインの賛否が大きくわかれている。マイナーチェンジで変わった新デザインに対して、これほどまでにさまざまな意見が飛び交うクルマは久しぶりだ。
動画サイトのコメント欄を見ると否定的な意見のほうが多く、かなり辛辣な類いのコメントも目立つ。動画サイトのコメント欄だけを見ていると、新デザインは大失敗との印象を抱きかねないが、これだけで判断するのは早計だ。
たとえば、日本最大自動車動画専門YouTubeチャンネル「LOVECARS!TV!」を 運営する河口まなぶさんがTwitterで新型フォレスターの顔の好き嫌いをアンケートで募った結果は、「好き」が35.1%に対して「嫌い」が36%で、好意的に見ている人も決して少なくないことがわかる。実際は五分五分といったところではないだろうか。
筆者個人の正直な感想としては、第一印象は悪かったものの、森のなかに置かれた姿を見て印象が変わった。都会や屋内で見るよりも、大自然のなかで見ると印象が良くなるというのは、フォレスターというクルマのキャラからすれば正しいと思える。
個人的な過去の思い出を振り返ると、2005年に2代目フォレスターの後期型で顔が激変したときの衝撃は今回の比ではない。当時はWEB動画やSNSがほとんど普及していなかった時代だったとはいえ、デザインの是非を問う声が激しく飛び交うようなことはなかった。あれから10数年を経て、スバル車のデザインもこれほどまでに多くの人から注目されるまでになったのだと、感慨深いものがある。
好き嫌いはわかれても、今回の新デザインには明確な意図が見られ、狙った方向性がハッキリしているので、そこは納得しやすいというスバルファンの声も少なくない。
たとえば大型化されたフロントグリル。フロントグリルに自社のアイデンティティを強調するのは世界的な流れでもあるし、BMWの4シリーズを見たあとでは、さほど大きすぎるとは思えない。
従来よりも大きくしながら「ヘキサゴン(六角形)」の印象を増したことは、最近のSUBARUが強く推し進めるデザインのコンセプトどおりであり、「6」という数字をデザインに反映し続ける所には信念を感じる。戦後に解体された中島飛行機を前身とする6社が、再びひとつに統べることで生まれた企業であるSUBARUが、今もなお「6」をアイデンティティとしながら視覚的に現す六角形を前面に押し出す。その結果のデザインということで、狙いや意図が明確なのだ。
フロングリルの大型化によって、必然的にヘッドライトユニットを小型化。ターンランプはLEDでヘッドライトユニット内蔵式となるなど、SUBARU車としての新しい試みも見られる。従来型はヒット作であり、デザイン面の評価も悪くはなかったが、激戦区の中型SUV市場で現状維持に甘んじるわけにはいかないとの危機感も伝わり、フロントマスクの大幅な刷新は、作り手の守りに入らない前向きな姿勢の表れだととらえたい。
フロントグリルとともに、フロントバンパーも前面に押し出すイメージを強め、前端部分が15mm伸長。これに伴いボディの全長も15mm増しとなったが、アプローチアングルは従来型の20.1度から21.4度(SPORTグレードは21.3度)と、1度以上も拡大している点は見逃せない。
元々フォレスターはラダーフレーム式ではないSUVとしては世界トップクラスの悪路走破性を備えているが、地味ながら、この強みがわずかに向上。やはり、より「らしさ」を強める狙いが込められたデザインといえる。
機能面では、従来型では一部のグレードにのみ設定していたルーフレールのロープホールを全グレードで選べるようになったり、荷室の上部にカーゴアッパーフックと呼ばれるフックを全車標準装備とするなど、アウトドア現場で重宝する装備の充実化がはかられた。これも「らしさ」を強調したポイントのひとつだ。
内装は上級グレードAdvanceの本革シートがナッパレザーを採用したり、ベーシックグレードTouringでもシートやドアアームレストに撥水ファブリックを採用するなど、上質化と機能性をアップ。最廉価グレードもしっかりと質感の底上げがはかられた。