多ければ多いほどいいわけじゃない! 排気量が大きくなっても1つか2つの「ターボ」の数の謎 (2/2ページ)

ターボ+スーパーチャージャーでターボラグを解消!

 運転者がアクセルペダルを操作した際のターボラグの解消法として、タービンに排出ガスを導入するところに弁を設け、これを可動式とすることにより、低回転では排出ガスの通り道を狭くして少ない量でも勢いを速め、回転が高くなっていくに従い弁を開けて、排出ガスの通路を広くすることができる。あるいは、タービンへの排出ガスの通り道をふたつに分け、低回転では片方だけを使い、高回転になったらふたつの通路を両方とも利用する考え方もある。

 それ以外に、低回転には機械式のスーパーチャージャーを用い、高回転ではターボチャージャーへ転換する考えもある。スーパーチャージャーは、排出ガスの影響を受けず、エンジン回転数の上下に応じて過給できるからだ。メルセデス・ベンツの直列6気筒エンジンでは、この発想でスーパーチャージャーとターボチャージャーの両方を備え、数はそれぞれひとつずつだ。さらに、これにモーターを加え、運転者がアクセルペダルを踏みだした瞬間からモーターを働かせ、次いで低~中回転まではスーパーチャージャーを用い、高回転でターボチャージャーへ切り替えるやり方をしている。

 スーパーチャージャーとターボチャージャーの両方を装備する手法は、1981年の日産マーチでも採用され、スーパーターボと呼ばれて販売されたことがある。

 ターボチャージャーには、ターボラグという課題が常に付きまとうため、多気筒エンジンではふたつ利用することが普及した。つまり、半分の気筒数(排気量)に見合ったターボチャージャーの大きさとすることで、少ない排出ガスから高回転での効果までを補い、ターボラグを抑えようというのだ。

 また、ターボチャージャーの数を増やせば、エンジンルーム内の置き場も見つけにくくなるので、ふたつが妥当な数といえる。ことにV型エンジンでは、吸排気が左右に分かれるので、偶数での装着が理にかなってくる。

 当然ながら、ターボチャージャーのような補器の数を増やせば原価も高くなる。また、ターボチャージャーを効率よく使うには、インタークーラーも必要になり、エンジンルーム内の場所の確保や原価との兼ね合いを含め、性能向上のために数を増やせばいいということだけでは済まなくなっていくのである。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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