命に関わる活動を現場で維持してくれるのが4本のタイヤだ
「そんな風に機種選定して、ディーラーで通常通りに購入するつもりで、三菱自動車さんに声をかけさせてもらったところ、イベントなどを通じてトーヨータイヤさんにも協力していただけることになったんです」
かくして”災害対策車両”としての要件に対し、自動車メーカーとタイヤメーカーと防災情報配信のプロが、それぞれの叡智を結集して実現されたのが、2号機アウトランダーPHEVと3号機エクリプス クロスPHEVの仕様だ。
「災害車両ですので基本、どこに行くか分かりません。オフロードか瓦礫か、突然の雪や急な悪天候の変化にも、対応できないといけません」
災害が起きた直後に想定される悪条件の路面でも走破できるよう、2号機にはトラクション重視で「オープンカントリーR/T」というタイヤが正式採用された。ショルダー側は走破性重視のマッドテレイン用形状ながら、中央部はオールテレイン用に回転方向の剛性を高めたブロックという、ハイブリッドなトレッドパターン設計を採用したモデルだ。サイドウォールに一部マットな連結ブロックと、ブラックレターがあしらわれた見た目もラギッドなタイヤだ。
もう一台、エクリプス クロスPHEVの3号機には、悪天候だけでなく急な変化に対しても適応ロバスト性を確保する意味で、オールシーズンタイヤである「セルシアス」シリーズが採用された。トレッドの外側は夏タイヤに求められるグリップや操安性、ウエット性能を重視したブロックとなっている一方、トレッド内側にはジグザグのブロックとサイプ形状で、スノーフレークマークを獲得しているほど、冬路面での実力をも併せもつ。スノー性能重視のサイプは内側寄りなので、パッと見にはオールシーズンに見えづらいタイヤでもある。
「我々の活動そのものはもちろん、生命そのものを現場で維持してくれるのが4本のタイヤですから、タイヤ選びは重要事でした」
ちなみに2号機と3号機の荷室には、NERV防災の職員らが職務を遂行するためのツールとして、「みちびき」の衛星通信モジュールが積まれている。みちびきには防災機関用の周波数チャンネルがあって、地上のインフラに頼らず情報通信できるのだとか。他にも、現場で職員らが寝泊りするための設営道具の他に、一箱5食分の防災食キットなども積まれている。
「職員が現場に携行していくのはもちろん、被災地で食料支援にもなるので、非常食キットとして常時車載しています。エヴァンゲリオンストアや東急ハンズなどでも販売されていまして、然るべきデザインになっています。別にウチには1円も落ちませんが、皆さんが防災を普段から意識して、備えてくれたらと思います」
それにしても、現実の公道を走行していることは、あるのだろうか?
「平時にも無論、走らせることはありますが、その時は『アプリ使っています』とか、声かけてくれる方もいますね(笑)」
それにしても、随分とキマっているホイールですが?
「タイヤの選定時にホイールの組み合わせもいくつか、ご提案いただいて。クルマ全体が作品中に出ていたとしてもおかしくない外観であるよう、これに関してはカッコよさで選んだところはあります」
事実は小説よりも奇なりとはいうが、アウトランダーPHEVとエクリプス クロスPHEV、そしてトーヨータイヤの見た目にもサイバー感漂うオフロードタイヤとオールシーズンタイヤは、特務機関NERV防災の任務を最初から想定していたかというハマり具合だ。
「自分の好きな作品の名前を借りているからこそ、作品に泥を塗らないような取り組みをしなければなりません。3.11で失敗していることを、次の世代でも失敗しないために、仕組み作りを進め、実装したい、それに尽きます」
どのような目的や目標にせよ、ステイホームという危機がこれだけ長く日常化している今だからこそ、どこかへ足を運ぶのに、エネルギーの割り当てを考え、足もとからキメていくことは、気分だけでなく意識をも、上げていくことなのだ。