歩行者やセンターラインが見えなくなってしまう現象も
3)制動距離
3つ目の注意点は、滑りやすくなり、ブレーキをかけてから停止するまでの制動距離も長くなるということです。タイヤの特性上、新品でタイヤの溝が10分の時には、晴天時と雨天時の制動距離にそれほど差は出ないのですが、問題はタイヤの溝が減ってきた時です。
JAFのテストでは、半分程度の4.7mmまで溝が減ったタイヤで比較したところ、晴天時には60km/hからのフルブレーキングで16.3mだった制動距離が、雨天時には16.7mまで延び、100km/hでは晴天時に47.6mだった制動距離が、雨天時には50.8mに延びたという結果が出ています。そして、溝が3.1mmと2割程度まで減ったタイヤで比較すると、晴天時が60km/hで15.8m、雨天時で18.0m、100km/hでは晴天時で42.6m、雨天時で70.5mという結果に。タイヤの溝が減るほどに、制動距離がどんどん延びてしまうことがわかっています。
また制動距離だけでなく、水分がタイヤの溝に入り込むことで路面を掴む力であるグリップ性能が落ち、ハンドルを切った時に手応えを感じにくくなったり、思ったよりもスパッと鋭く切れてしまうといったことが起こります。そして、高速道路などで高い速度域で起こりやすいのが、タイヤが水面に乗り上げて滑走状態になり、まったくハンドル操作もブレーキも利かなくなってしまう「ハイドロプレーニング現象」です。
これらを防ぐには、まず定期的にタイヤを点検し、溝が減ったタイヤは早めに交換すること。最近は燃費を気にして「低燃費タイヤ」を選ぶ人も多いかもしれませんが、購入時には必ずタイヤに表示されている「ウエット性能ランク」を確認してください。ランクはa、 b、c、dの4段階に分かれており、ランク「a」のタイヤと比べて、ランク「c」のタイヤは100km/hからの制動距離が約10m長くなるというテスト結果があります。
4)グレア現象
4つ目の注意点は、雨の日の夜に起こりやすい「グレア現象」です。これは、対向車と自分のクルマのヘッドライトが重なる部分で、互いの光が反射し合うことで、その間にいる歩行者や標識、センターラインや停止線といったものが見えなくなってしまう現象のことを言います。
ただでさえ、夜間は対向車のライトが眩しく感じ、眩惑されて運転が不安になりやすいのですが、グレア現象が起こると、ドライバーは歩行者などの発見が遅れ、十分な減速が間に合わなかったり、ハンドル操作が的確にできなかったりして、事故につながりやすいのです。日頃から、視界の確保などに備えておくことが大事ですが、こうしたグレア現象やライトの乱反射を低減する効果を謳った偏光サングラスを試してみるのも1つの手。色の彩度や物の立体感を高めてくれたり、対向車の強い光をカットしてくれたりという効果があるようです。
5)停車中のドアの開け閉めや乗り降り
5つ目の注意点は、停車中のドアの開け閉めや乗り降りです。通常、クルマを停めて車外へ降りる時には、後方などからほかの車両や歩行者、自転車などが来ていないことを確認して、ドアを開けますね。でも雨が降ると、安全を確認しようにもサイドミラーや窓が曇って見えなかったり、なるべく濡れないように乗り降りしたいという気持ちが先行し、傘などの準備にも気を取られて、安全確認がおろそかになりがちです。
また、子供をチャイルドシートに乗せようと、傘をさしながらお世話をしているうちに、風で傘が飛ばされてしまった、なんてこともよく見かける光景。飛ばされた傘がもし車道に落ちたり、走ってきた自転車などに激突したら……大惨事にもつながりかねません。雨の日は、乗り降りにも十分な注意が必要ですね。
ということで、5つの注意点をご紹介しましたが、もちろん基本はスピードを控え、急のつく操作はNGです。日頃から雨の日に備えておくことも大切なので、ぜひ今日から取り入れてみてくださいね。